核融合発電の実現を目指す自然科学研究機構核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の大型ヘリカル装置(LHD)が目標としてきたイオン温度1億2千万度を達成したと同研究所が9日に発表した。

写真 核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の大型ヘリカル装置(LHD)(同研究所提供)

今回目標達成したLHDは高さ約9メートル、直径約13.5メートルの金属製の大型実験装置。核融合科学研究所によると、このLHDで重水素を使った実験を3月7日に開始。イオン温度は同月中に1億度を超え、4月に1億2千万度を観測。7月の再現実験でも1億2千万度を達成したため今回発表したという。同研究所は今後、1秒以上とされる閉じ込め時間達成など、実用化に必要とされるイオン温度以外の課題に取り組む。

水素や重水素、三重水素(トリチウム)などの軽い原子をつくる原子核と電子が超高温環境で自由に空間を飛び回る「プラズマ」状態の中で原子核同士が衝突して別の重い原子核になるのが核融合で、その際に生じるエネルギーを利用するのが核融合発電。

核融合発電炉のタイプには発電に必要な磁場の閉じ込め方式によっていくつかの型があり、同研究所のLHDは装置内の真空容器にねじれたドーナツ形をした超電導コイルがあるヘリカル型。日本や欧州、ロシアなどが国際協力でフランスに建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)や量子科学技術研究開発機構 核融合エネルギー研究開発部門 那珂核融合研究所にあるJT60などは真空容器が輪型のトカマク型。

核融合科学研究所によると、トカマク型は既にイオン温度1億2千万度を達成しているが、短時間の運転に限られるのに対して、ヘリカル型は原理上定常運転が可能なため、ITER後に計画されている、実際に核融合発電を行う発電炉の最有力候補として期待できる、としている。

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