日本電信電話(NTT)、KDDI総合研究所、住友電気工業(住友電工)、フジクラ、古河電気工業(古河電工)、日本電気(NEC)、千葉工業大学(千葉工大)は、現在広く使用されている光ファイバと同じ細さで、1本に4個の光の通り道(コア)を有するマルチコア光ファイバを用い、毎秒118.5テラ・ビット伝送を実現したことを発表した。

この成果は 7月31日~8月4日にシンガポールのSands Expo and Convention Centreで開催された光通信技術に関する国際会議「2017 Opto-Electronics and Communications Conference」(OECC)のポストデッドライン論文として報告された。

今回のマルチコア光ファイバの特長(出所:ニュースリリース※PDF)

多様な通信サービスの普及に伴い、2020年代の後半には現在使用している光ファイバの伝送容量限界が顕在化すると予測され、ビル内やデータセンタ内における光ファイバ設備量の肥大化と光ファイバ配線の輻輳も深刻化しつつある。このため、1本の光ファイバに10個以上のコア(光の通り道)を配置したマルチコア光ファイバで伝送容量を劇的に増やす研究開発が行われてきた。

しかし、コア数の多いマルチコア光ファイバでは、ガラスの直径が既存の光ファイバより太くなるため、製造技術の飛躍的な向上と周辺技術のさらなる研究開発が不可欠であった。

そこで、NTT、KDDI総合研究所、住友電工、フジクラ、古河電工、NEC、千葉工大は、マルチコア光ファイバ技術の早期活用に向け、1本の光ファイバに配置するコア数は 4~5個にとどめるものの、現在使用されている光ファイバと同じ国際規格に準拠した細さで、既存技術が活用しやすいマルチコア光ファイバの研究開発を進めてきた。

そして今回、現在の光ファイバと同じ細さの国際規格に準拠したガラス直径(125 μm)を採用したことにより、既存の光ファ イバ製造技術や光ファイバ同士を接続する光コネクタなど既存の周辺技術が活用できると同時に、複数メーカーの要素技術を組み合わせて長距離かつ大容量のマルチコア伝送システムが構築できることを実証した。

ガラス直径の拡大による製造性低下のイメージと標準ガラス直径を用いたマルチコア光ファイバの試作例(出所:ニュースリリース※PDF)

この成果は、マルチコア光ファイバ技術の早期実用化に向けた道を切り拓くものと位置づけられる。今後は、この光ファイバ技術を2020年代前半に実用化することをめざすとともに、将来の多様なデータ通信需要に対応可 能な光伝送基盤の実現に貢献していくとしている。

相互接続伝送路の構成と損失特性(出所:ニュースリリース※PDF)