立教大学は、物質によらず、すべての物体は重力場の中で同じ加速度で落下するという「自由落下の一様性」が、ミリメートル規模の小さな物体による重力でも成り立つことを確認することに成功したと発表した。

同成果は、同大理学部の村田次郎 教授と二宮一史 研究員を中心とする研究チームによるもの。詳細は重力物理学の専門的学術雑誌「Classical and Quantum Gravity」に掲載された。

ガリレオのピサの斜塔の実験で有名な「すべての物体は同じ加速度で落下する」という自由落下の一様性は、力に対する動きにくさを示す「慣性」という量と、「重力」を感じる量が共に「質量」という同じもので理解できることを示したもので、アインシュタインはこの2種類の異なる量が等しいと考える「等価原理」から、重力の理論である「一般相対性理論」を完成させた。

これまでの研究から、天体間の距離などの大きな規模では高い精度で検証されていたがが、ヒトの身近な規模では確認されておらず、中でもミリメートル以下の小さな世界では重力の法則の実験による検証が難しいことから、一般相対性理論に先立つニュートンの万有引力の法則であっても検証の必要な仮説の域を出ていないのが実情であったという。

そこで研究チームは今回、銅とアルミで出来た2種類の小物体を、ピサの斜塔の実験における地球に見立てた重力源として用い、タングステンの小物体が重力によって引き寄せられる様子を画像として観測する事で、両者に対する重力加速度の大きさの比較を行うことで、ミリメートルサイズの物体における自由落下の一様性の検証を行ったという。

研究チームが用いた等価原理測定装置「Newton-II」の概略図と実物の写真。ワイヤーで吊るされたタングステンのねじれ秤のまわりを、アルミと銅の小物体が回転させながら、ねじれ秤の角度変位を観測する (出所:立教大Webサイト)

その結果、地球による重力の1億分の1という微弱な重力を検出し、その物質依存性を検証することに成功したとする。その測定精度は数%程度であり、大きな規模での検証に比べると低い精度ではあるもののセンチメートル規模において測定精度よりも大きく等価原理を破る、新たな理論の提案があればそれを否定することが出来るようになると研究チームでは説明している。

等価原理測定装置「Newton-II」で観測された重力信号。タングステンの物体が銅とアルミの物体に対して感じる重力場の強さの比が質量比と矛盾ない事が確認された。縦軸は重力によるねじれ秤の角度変位、横軸は時間 (出所:立教大Webサイト)

なお、研究チームでは現在、さらなる高感度化、高精度化、そして小型化を進めているとしており、その中で等価原理と万有引力の法則のさらに厳しいテストを行っているとのことで、今後、近距離で等価原理を破る新たな重力理論の兆候や、余剰次元の存在を示す万有引力の法則の破れなどが発見される可能性もあるとコメントしている。