東京工業大学(東工大)は8月9日、さまざまな芳香族アルデヒドから芳香族アミンだけを合成する触媒を開発したと発表した。

同成果は、東京工業大学科学技術創成研究院 原亨和教授、鎌田慶吾准教授、喜多祐介助教らの研究グループにによるもので、7月31日付の米国科学誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン版に掲載された。

芳香族アミンは、医農薬、ゴム、ポリマー、接着剤、染料などのさまざまな化成品に使われており、重要な化学品であるといえる。しかし、これらアミンを芳香族アルデヒド原料から製造する還元的アミノ化において、従来の触媒は電子を与える力が強く、芳香環の分解、副生物の生成を完全に防ぐことはできなかった。

今回、同研究グループは、構築したルテニウム-酸化ニオブ複合体触媒(Ru-Nb2O5)が、従来の触媒とは異なり、芳香族アルデヒドの還元的アミノ化によって有用な芳香族アミンのみを合成できることを発見した。たとえば、複素環式芳香族化合物であるフルフラールからフルフリルアミンを合成する場合、従来の触媒では原料の10%以上が使い道のない副生物になっていたが、Ru-Nb2O5ではフルフリルアミンの収量が99%に達したという。

また、Ru-Nb2O5は、生成物との分離が容易な固体材料であり、繰り返し・連続的に使用しても触媒の性能は低下しないことが確認されているほか、既存技術を組み合わせることによって、これまで効率的に合成することができなかった高機能・高付加価値なアラミド樹脂の原料を、バイオマスから高効率合成することにも成功している。

今回の成果について同研究グループは、芳香族アミンの製造だけでなく、再生可能なバイオマスの利用に一石を投じるものと説明している。

触媒の性能 (出所:東工大Webサイト)