物質・材料研究機構(NIMS)は8月3日、高誘電体として知られる層状ペロブスカイト構造を持つナノシートを作製し、膜厚10nm以下のナノスケール領域で世界最高性能となる誘電率470の誘電体膜の開発に成功したと発表した。

同成果は、NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 長田実主任研究者、佐々木高義拠点長らの研究グループによるもので、7月27日付の米国科学誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン版に掲載された。

グラフェンをはじめとする原子層物質、2次元物質は、薄く強靭で、かつ高い電気伝導性などすぐれた性質を持つことが知られており、電子デバイスなどへの応用が検討されている。近年では、グラフェンにはない新機能の開拓を目指す「ポストグラフェン材料」研究への関心も高まっている。特に2次元物質はコンデンサへの応用に最適であると考えられるが、これまで開発された2次元物質の多くは電気伝導性材料が中心であり、高誘電特性を有するものの開発は遅れているという状況であった。

同研究グループは、酸化物ナノシートをベースとした誘電体材料の開発を進めており、今回の研究では、高誘電体として知られる層状ペロブスカイト構造を持つ一連の物質群のなかからCa2Nam-3NbmO3m+1(m = 3~6)に注目。高い誘電率を持つ誘電体ナノシートの開発に成功した。

同誘電体は、原子レベルで構造を制御することで、誘電率をコントロールすることが可能であり、mを変化させて単位ユニットに相当する金属酸素八面体を1個増やすことで、八面体3個の3層型誘電体(誘電率210)から誘電率が約80ずつ増加する。八面体数が6個の6層型誘電体では、膜厚10nm以下のナノスケール領域で安定な誘電特性、絶縁性を示し、世界最高の誘電率470と高い電気容量 (203μF/cm2)を実現した。

同研究グループは、同誘電体の特性を利用することで、従来の高誘電体と比較して1/100の小型化と1000倍以上の大容量化を同時に実現する高性能のコンデンサ素子の開発が期待できると説明している。

ペロブスカイトの原子層制御による高誘電率化のイメージ図 (出所:NIMS Webサイト)