東北大学や量子科学技術研究開発機構(量研機構)などで構成される研究グループは8月1日、波長1053nmの励起レーザーを用いると、窒素ガス雰囲気中のAuとAlプラズマからの波長2.9nm~6nmの発光強度が、窒素ガスの圧力に応じて増大する現象を発見したと発表した。

同成果は、東北大学 多元物質科学研究所の江島丈雄 准教授、量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学研究部門の加道雅孝 研究企画室長代理、同 岸本牧 関西光科学研究所 上席研究員、東海大学工学部の篠原邦夫 客員研究員(研究実施当時、日本原子力研究開発機構(現 量子科学技術研究開発機構)の研究嘱託を併任)らによるもの。詳細は「Applied Physics Letters」(オンライン版)に掲載された。

物質にレーザー光を照射して生成されるプラズマを利用した光源は、レーザー生成プラズマ光源(LPP光源)と呼ばれ、軟X線領域の実験室光源として利用されるほか、次世代の半導体露光装置であるEUVの光源などとしての活用が期待されている。軟X線顕微鏡の光源として用いられているのは、ターゲットに金などの重金属を用いたLPP光源で、酸素と炭素のK殻吸収端の間の、波長2.3nm~4.5nmの波長光が得られることが知られている。

今回の研究では、波長1053nm、120J/pulse、duration time=500psの励起レーザーを用いたほか、ターゲットにAu箔(99.9%、thickness=200μm)およびAl箔(99.9%、thickness=200μm)を用いて、真空槽に送り込む窒素ガス圧を制御しながらレーザー光を照射しプラズマを生成した。その結果、波長ごとに多少異なるが、ガス圧力が0Torrから3Torrに増える間に得られた発光強度は約1桁増大することを確認。詳細な検討を行ったところ、プラズマのマクロな変化、すなわち発光に寄与するイオン数の増加によって、発光強度の増大が起こっているという仮説に至ったとするが、現時点では、ガス導入に伴って発光に寄与する高い価数のイオンの寿命が長くなったと考えられるものの、イオン数が増加する詳細な機構は不明としている。

なお、研究グループでは、今回の実験以降、励起レーザー、ターゲットとガスの種類を変えても同様の現象が起こることも確認しており、LPP光源を使用するEUVに、同技術が適用できれば、光源の低コスト化を図ることができるようになると説明している。

従来のLPP光源(左)と今回のLPP光源(右)との違い (出所:量研機構Webサイト)