国連が「持続可能な開発目標(SDGs)」の現状について「極度の貧困層は減ってはいるものの依然として世界の7億7,000万人近くが1日1.9ドル未満で暮らしている」などとする報告書を発表した。この中でグテレス国連事務総長は「目標を達成するためには多くの分野で進展が遅すぎる」「2030年までに気候変動に対応し、貧困を根絶して平和な社会を構築するためには、各国政府が取り組みを一層加速させなければならない」などと強調している。

図 SDGsの17の目標(提供・UNDP)

写真 5月25、26の2日間、科学技術振興機構(JST)などが主催して東京都内で開かれた国際会議「ジェンダーサミット10」の閉会セッション(5月26日)。「社会・文化的性差であるジェンダーの平等は『国連の持続可能な開発目標(SDGs)』すべての実践に組み込まれることが必要」などとする3項目の提言(「Tokyo Recommendations:BRIDGE」)を発表した。「ジェンダーの平等」はSDGsの目標5で定められているほか多くの目標と関連すると指摘されている。

「The Sustainable Development Goals Report 2017」と題した報告書はまず、1999年以来10億人近くが極度の貧困状態から脱したが、2013年の時点で、1日1.9ドル未満で家族と暮らす人は7億6,700万人を数え、その数を上回る人が飢えと戦っている現状を指摘した。その上で発育不全となっている5歳未満の乳幼児は世界全体で減少はしているものの依然として推定1億5,500万人存在しており、食料援助などの取り組み加速が必要、とした。

報告書はまた、2000年から2015年の間に妊産婦の死亡率は37%、5歳未満乳幼児の死亡率は44%それぞれ低下したものの、15年時点で30万人以上の妊産婦と590万人の5歳未満乳幼児がそれぞれ死亡している、とした。このほか、世界の平均失業率は2010年の6.1%から16年の5.7%にわずかに改善したものの、若年層の失業率は目立って高い、などとSDGs の17の目標の多くで目標に達していないことを示す数字を提示している。

SDGsは150カ国以上の首脳が参加して2015年9月に開かれた国連サミットで採択された。2030年を達成時期に設定し、世界から貧困や飢餓、さらに人や国の不平等をなくすことを目指し、気候変動への具体的対策も求めるなど17分野の目標と169の達成基準を定めている。目標1では、世界のあらゆる場所で貧困に終止符を打つこと、2では、飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善などを掲げている。妊産婦の保健は目標3で定める世界のあらゆる年齢のすべての人々の健康と福祉を推進するという目標に盛り込まれている。 報告書は今月17~19日にニューヨークの国連本部で開かれたSDGs達成に向けた閣僚級会合に合わせて公表された。

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