市場調査企業である仏Yole Developpementは7月26日(欧州時間)、「パワーエレクトロニクス産業レポート2017年版」を発行し、2016年のパワー半導体市場が前年比3.8%増の280億ドル規模に達したことなどを公表した。

同レポートでは、市場全体の成長率のほか、以下のようなことが述べられている。

  • 2016年のIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)市場は8%成長し、2017年は10%以上成長が見込まれる。中国メーカーは、企業買収を通してIGBTとパワーMOSFET製造ノウハウを習得しようとしている
  • ソーラーおよびEV/HEVパワーコンバータ市場は、2016年に20%以上成長し、パワーエレクトロニクス市場をけん引した
  • パワー半導体業界での数多くの企業買収(2016年に生じた大型買収としては、ON SemiconductorのFairchild Semiconductorの買収、Analog DevicesによるLinear Technologyの買収など)、GaNの登場、SiCソリューションの採用拡大(例えば、中国電気自動車メーカーBYDはSiCを用いたオンボード・チャージャを提案している)などを見ればわかるように、パワーエレクトロニクス業界はダイナミックに進化を遂げている
  • パワー半導体およびその応用分野であるパワーエレクトロ二クス業界では新しい能動デバイスの開発だけではなく、新しいパッケージング技術を採用したパワーエレクトロニクス・システムの性能向上まで広い範囲で技術革新が進んでいる。

図1 パワーデバイスの売上高(単位:10億ドル)の推移。2016年は実績、2017年以降は予測。緑色はパワーIC、オレンジ色はパワーモジュール、赤色はディスクリート (出所:Yole Developpement)

パワー半導体は2022年には350億ドル規模に

Yoleのテクノロジおよびマーケット担当アナリストであるMattin Grao Txapartegi氏は「パワーエレクトロニクスは今やあらゆる応用分野へ浸透している。特にこの市場拡大に貢献しているのは、EV/HEVを含む再生可能エネルギーとeモビリティである。ソーラーおよびEV/HEVコンバータ市場は、2016年、前年比20%以上成長したのは注目に値する」と述べている。

また、Yoleのテクノロジ&マーケット・アナリストであるAna Villamor氏は、「今日、パワーデバイスの新規性は、WBG(ワイドバンドギャップ)半導体であるSiCとGaNの2種類の新しい基板材料によってもたらされている。性能向上や市場ニーズへの適合などのWBGの利点が注目されており、ますます多くのアプリケーションでWBG採用が加速している。Yoleでは、WBG市場は2016年から2022年の間に30%を超える年平均成長率を達成すると見込んでいる。WBGデバイス以外にも、パワーモジュールパッケージングはじめ多くの革新的技術が登場しており、より高い電力密度と高集積化された製品に対するニーズに応えようとしている。特にパッケージの進化はシステムレベルでの、より厳しい要件に対応するものであり、これまでも自動車業界がパワー半導体の革新と成長をけん引してきたが、今後、その傾向がさらに強まるだろう」とも説明。パワーデバイスの継続的な成長は今後も続き、2022年には市場規模がおよそ350億ドルに達するだろうとしている。

図2 パワー半導体製品の、ローエンド(普及品)からハイエンド(高級品)に至る製品のレベル(縦軸)と家庭用から産業用を経て3.3kV以上に至る定格電圧(横軸)の関係性。シリコンIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)(オレンジ色)がシリコンMOSFET・トライアック・バイポーラ分野(緑色)およびシリコンサイリスタ・IGCT (集積化ゲート転流型サイリスタ)(灰色)分野へ勢力拡張している。ハイエンド領域では、GaNやSiCがシリコン領域に侵攻してきている。点線で囲んだ領域では、シリコンとGaNとSiCが共存している (出所:Yole Developpement)