豊橋技術科学大学(豊橋技科大)は7月27日、カルボン酸からキラルな塩素化合物を不斉合成することに成功したと発表した。

同成果は同大環境・生命工学系の柴富一孝准教授、同博士後期課程1年の北原一利さんらによるもの。詳細は英国学術誌「Nature Communications」に掲載された。

複雑な構造を有する機能性分子の開発において、これらを精密に合成する技術が求められている。中でも医薬品の合成においては、多くの生理活性物質は双方の鏡像異性体の薬理活性が異なり、不要な異性体が混入していると副作用などが懸念されるため、キラル分子の望みとする鏡像異性体のみを高い純度で合成する技術(不斉合成)が必要とされていた。

同グループはカルボン酸をハロゲン原子に変換する脱炭酸的ハロゲン化反応に着目。独自に開発した有機分子触媒を利用することでβ-ケトカルボン酸の脱炭酸的塩素化反応が高い不斉収率で進行することを確認した。具体的には、同反応では対応するα-クロロケトンが最高98%eeの光学純度で得られるとしている。

βーケトカルボン酸の不斉脱炭酸的塩素化反応(出所:豊橋技科大Webサイト)

なお同グループは、同手法を利用して強い生理活性を持つ天然生理活性を持つ天然有機化合物の合成を達成したとしてより、今後、医薬品の合成ルートの高効率化や新薬開発への応用が期待されるとしている。