東北大学などは7月25日、錯体結晶のように規則正しい骨格構造をもち、その中に金属原子が埋め込まれた新規炭素系触媒を開発したと発表した。

同成果は、東北大学多元物質科学研究所 西原洋知准教授、九州大学先導物質化学研究所 谷文都准教授、大阪産業技術研究所 丸山純研究主任、兵庫県立大学大学院工学研究科 松尾吉晃教授らの研究グループによるもので、7月24日付の英国科学誌「Nature Communication」に掲載された。

金属有機構造体を含む錯体結晶においては緻密な構造設計により高活性な触媒が開発されているが、熱や薬品に弱いことや導電性が無いといった欠点があった。金属を含有する炭素系触媒では反対に、熱や薬品に強く、導電性を持つ利点があるものの、構造が乱雑であるため活性を高くできないことが課題であった。

同研究グループは今回、前駆体の化学構造を合理的に設計することにより、錯体結晶のように規則的な構造をもつ金属含有炭素系触媒の合成ルートを発見。同ルートによって得られる材料を「規則性炭素化物構造体; Ordered Carbonaceous Framework(OCF)」と名付けた。

従来の炭素系触媒の調製方法と今回の研究手法 (出所:東北大Webサイト)

前駆体には、熱に強い機能性のNi-N4ブロック(ポルフィリン環の中心)と、熱重合してから炭素骨格に変化するジアセチレン鎖をもつ錯体分子からなる錯体結晶を用いている。同結晶を加熱することで、ジアセチレン鎖が重合し、Ni原子が規則正しく配列した結晶性高分子が生成する。さらに加熱を続けると、Ni-N4ブロック以外の部位が炭素質構造に変化し、OCFが生成する。この際、Ni原子の位置はほとんど変化しない。全体の操作としては、前駆体の錯体結晶を単に600~700°Cで炭素化するという簡便なものである。

OCFの調製スキーム (a)前駆体の錯体結晶の構造 (b)(a)を構成する錯体分子の構造 (c)(a)の熱重合により生じる結晶性高分子の構造 (d)(c)のTEM写真 (e)(c)の炭素化により生じるOCFの構造 (f)(e)のTEM写真 (炭素は黒色、窒素は緑色、水素は水色、Niは紫色の球) (出所:東北大Webサイト)

OCFは、炭素材料の導電性とNi-N4ブロックに由来する触媒活性を併せ持つため、電気化学的にCO2を選択的にCOに還元することができる。同研究グループは、CO2転換触媒、燃料電池用の白金代替触媒をはじめとするさまざまな新規触媒の開発に繋がるものと説明している。