デジタルガレージ(DG)は7月25日、バイオテクノロジーとITが重なる、次世代バイオ分野(Biotech2.0)で事業を手がけるスタートアップ企業を対象とした、投資および事業育成を行うインキュベーション事業に本格参入すると発表した。一環として、最先端のバイオテクノロジー分野においてインキュベーション事業を手がける米PureTech Healthと業務提携した。

今回の業務提携に基づき、PureTechはDGによるデジタルヘルス領域を含む次世代バイオ事業の創出を支援。DGは、将来の合弁会社設立を視野に入れつつ、PureTechのデジタルヘルス事業の日本展開を加速するために協力する。

PureTechは、臨床試験段階をターゲットにしたバイオ医薬品会社で、特に神経系、消化器系、免疫系の機能不全がもたらす深刻な病気に向けた新しい医薬品の開発に注力している。複数の医薬品を並行して手がけており、うち2つは2017年内に最終的な臨床試験や登録研究を完了する予定。そのほかにも臨床試験段階の複数の医薬品や、その前段階に位置づけられる医薬品の開発を進めている。

Growth-Stage(PureTech独自のスタートアップ企業の分類の1つ)に属するPureTech傘下のスタートアップ企業

DGが次世代バイオ分野のスタートアップ企業の育成を開始する背景として、バイオテクノロジーとIT技術が急速に融合したことを挙げている。バイオテクノロジーの進化を加速する遺伝子解析や遺伝子合成の進展には、ムーアの法則に従い急速にコストが低減するコンピューティング資源の活用が欠かせないものだという。

また、深層学習技術などに基づく最新のAIを利用して瞬時に画像解析し、正確な診断に役立てることなども可能になりつつあるとしている。同社は、2010年に立ち上げたシードアクセラレーションプログラム「Open Network Lab」を通じて、日本から世界を目指すインターネット関連のスタートアップ企業を対象にした、投資・事業育成を行ってきた。

ITとバイオテクノロジーの融合

今回のPureTechとの業務提携を契機に、今後はこうしたインキュベーション事業の対象を、バイオテクノロジー分野のスタートアップ企業にも広げていく。有望なスタートアップ企業への投資と並行し、バイオテクノロジー分野の研究者の起業を支援するエコシステムの構築に注力する予定だ。

具体的には、研究者や起業家が情報を交換できるコミュニティの形成、研究開発の方針や経営などを指南する指導者(メンター)とのコミュニケーションの場の提供、コンピューターで分析した結果を実証するためのウェットラボ(実験室)の設立などを想定している。

DGは、カカクコム、クレディセゾンを含む3社で運営する研究開発組織「DG Lab」においてバイオテクノロジーを重点分野の1つと位置づけており、今回のPureTechとの業務提携を通じてDG Labにおけるバイオテクノロジー分野での研究開発を本格化していくことを目指す。なお、DGは全額出資子会社で投資・育成事業を手がけるDGインキュベーションを通じ、PureTechの株式を保有している。