北海道大学は、北欧原産の大型外来ナメクジ「マダラコウラナメクジ」の北海道内における分布拡大の状況を、一般市民より寄せられた目撃情報を基に把握したことを発表した。さらに、在来の大型ヒルがマダラコウラナメクジを捕食者している可能性が示された。同成果は、生態系や農作物へ悪影響を与え得る侵略的外来種であるマダラコウラナメクジの現状と今後の動向に、重要な示唆を与える成果であるという。

同成果は、北海道大学 大学院農学研究院森林生態系管理学研究室の森井悠太氏、および日本学術振興会特別研究員の中野隆文氏によるもので、7月17日に「BioInvasions Records (Open Access Journal)」にてオンライン公開された。

マダラコウラナメクジの写真(撮影:森井研究員) (出所:北海道大学webサイト)

外来種の中でも、生態系や農作物に大きな影響を与える外来種は「侵略的外来種」と呼ばれ、状況に応じて積極的な対応が求められる。同研究で扱ったマダラコウラナメクジは世界的に分布域を拡大している侵略的外来種のひとつだ。近年、日本にも侵入・定着したことが明らかになっている。2006年に茨城県で最初に発見されてから、急速に分布域を拡大しており、正確な現状の把握が求められていた。

そこで同研究では、新聞記事やテレビ番組においてマダラコウラナメクジが紹介された際、森井研究員が一般市民へ情報提供を呼び掛けることで、北海道内におけるマダラコウラナメクジの分布域と分布拡大の経過把握を試みた。

これにより、一般市民から情報が寄せられ、同研究以前に分布が確認されていた北海道内の2地点(札幌市円山公園付近および江別市))以外にも、岩見沢市、北広島市、芦別市、八雲市、室蘭市、島牧村に、すでにマダラコウラナメクジが分布していることが明らかになった。目撃情報の多くは札幌市内か札幌市に隣接した地域に集中していたが、芦別市、八雲市、室蘭市、島牧村は、それぞれ遠く離れており、発見されてから非常に短い期間で北海道内の広域に分散しつつあることが示された。

カワカツクガビル(右)がマダラコウラナメクジ(左)を捕食している写真(撮影:一般市民) (出所:北海道大学webサイト)

さらに、札幌市西区で撮影された写真より、大型の在来ヒル(カワカツクガビル)がマダラコウラナメクジを捕食する様子が確認された。カワカツクガビルは従来、ミミズのみを捕食すると考えられていた。この発見は、新たな外来種に対し在来の生物がいかに対応するのかという保全生物学的な課題に対して、また、専食者(ごく特定の獲物のみを捕食する生物)がどのように餌資源をシフトするのかという進化生物学的な課題に対して、興味深い知見を与えるものと考えられるという。