大阪大学は、ラット糖尿病性腎症モデルラットを用いて、MRIで腎臓繊維化を画像化に成功したことを発表した。

同成果は、同大学 大学院医学系研究科の貝森淳哉 寄附講座准教授(先端移植基盤医療学)、猪阪善隆 教授(腎臓内科)、高原史郎 寄附講座教授(先端移植基盤医療学)らの研究グループによるもの。詳細は、英国科学誌「Scientific Reports」(オンライン版)に掲載された。

糖尿病ラットにおいて、シリウスレッド(赤)で染色した繊維化(左図)が、DTI-MRIで白く見えている(右図) (出所:大阪大学webサイト)

糖尿病による腎障害により発症する糖尿病性腎症は、日本における人工透析の最も頻度の高い原因だ。慢性腎臓病の病気の進行は、腎臓の組織繊維化と密接な関係があることが知られていた。しかし、これまで糖尿病性腎症では、組織繊維化は侵襲的な腎生検でしか評価ができず、MRIやエコーなどの画像検査では評価が困難だった。

近年、拡散MRIが腎臓の繊維化を評価できる可能性が示唆されてきたが、未だ確立しているとはいえなかった。また、糖尿病性腎症に関しては、組織の浮腫が画像に影響を与えるため、拡散MRIでは評価不可能と考えられており、浮腫の影響によらず繊維化を評価する画像診断が求められていた。

今回、同研究グループでは、拡散MRIを多方向から撮影し画像化したDTI-MRIと、より感度の高い撮影方法であるスピンエコー法を組み合わせた撮影方法を開発し、ラット糖尿病モデルの腎臓を撮影することにより、腎臓の繊維化を画像化することに成功。従来の方法では、約3時間の長時間のMRI撮影が必要になり、その間腎臓を静止させておく必要があったが、同研究グループは長時間腎臓の血流、温度を変化させることなく静止可能な特殊な器具を開発することで、腎臓を静止させて撮影することを可能にした。

同成果により、今後、生体で腎臓を固定する方法や、さらに感度の良い撮影方法に改良することで、糖尿病による腎障害の進行の程度を非侵襲的に、正確に評価する手法の実用化が期待されるという。