Marvell Semiconductorは、自動車向けイーサネット関連製品として、高いセキュリティを提供するギガビットイーサネットスイッチ「88Q5050」を発表した。

セキュア車載ギガビットイーサネットスイッチ「88Q5050」のパッケージ外観

完全自動運転の実現に向けて、各種センサとECU間の通信や、クラウドと自動車との通信などにおけるIPネットワークの活用が期待されている。ECUがさまざまなデータのやり取りと行う際に、スイッチ機能は今後、これまで不可欠なものとなってくるが、そこで求められるのが高速かつセキュアな通信の実現であり、同製品はそうしたニーズに対応することを目的に開発されたものとなる。

自動車の内部でイーサネットの活用が今後進むことが期待されている。すでに欧州を中心に、一部の車両でイーサネットを実際に採用する、という動きもでてきている

最大の特徴はハードウェアのDPI(ディープパケットインスペクション)エンジンを搭載したこと。通常のIT機器で用いられてるDPIはIDヘッダ部の48バイトを解析するが、同製品ではこれを96バイトまで拡張したほか、ビット単位のフィルタリングを可能にするなど、セキュリティ性を高めたとする。

また、ハッキングされないセキュアなブート領域を確保する「トラステッドブートテクノロジ」も採用。OEMが認証したドライバのみの起動といった動作を可能としている。

さらに、低消費電力も特徴としており、イーサネットPHY単体の消費電力は業界最小レベルと同社では説明しているほか、8ポートスイッチとしてみても低消費電力であるとする。加えて、起動時間についても、「一般的な車載ECUの起動時間は500ms~1s程度だが、同製品はそれよりも早い時間での起動を実現した」(同社)としている。

なお、同製品はCPUコアとしてARM Cortex-M7(最大250MHz)を採用。Tightly Coupled Memories(TCM)、つまりSRAMを実装することで、外部メモリに寄らない高速なDPI処理を実現したとしている。また、このほかにもAVB/TSNやIEEE 100BASE-T1/IEEE 100BASE-TX/MII/RMII/RGMII/GMII/SGMIIといった各種インタフェースを選択可能なポートも用意。ニーズに応じて使い分けることが可能だとしている。

「88Q5050」の概要とブロック図。車載用途だが、Cortex-Rシリーズではなく、Cortex-M7を選択したのは、TCMなどの機能に加え、もともとARM側でも車載用途での適用を想定して開発した部分もあったための模様だ