理化学研究所(理研)は7月22日、希土類金属触媒を用いて、金属イオンとヘテロ原子との特異な相互作用を活用することにより、ヘテロ原子を含むα-オレフィンとエチレンとの共重合を任意の混合比で実現し、さまざまなヘテロ原子を含む機能性ポリオレフィンの合成に成功したと発表した。

同成果は、理研環境資源科学研究センター先進機能触媒研究グループ 侯召民グループディレクター、王春翔基礎科学特別研究員、羅根特別研究員、西浦正芳専任研究員らの研究グループによるもので、7月21日付けの米国科学誌「Science Advances」に掲載された。

ポリエチレンに代表されるポリオレフィンは、包装材や農業用フィルム、ゴミ袋などとして幅広く利用されており、重要な汎用性高分子材料であるといえる。しかし、ポリオレフィンにはヘテロ原子などの極性ユニットがないため、極性基を含む高分子材料や顔料、ガラス繊維などとの親和性が低く、これらの材料との混合利用が難しいといった課題がある。

これまでに、ヘテロ原子を含むオレフィンモノマー(極性モノマー)をエチレン(非極性モノマー)と共重合させ、対応するヘテロ原子を含むポリオレフィンを合成する研究が行われてきたが、ヘテロ原子を含むオレフィンモノマーは通常、エチレンより重合活性が低いため、導入できる量や得られる共重合体の分子量が低いといった問題があった。

同研究グループは今回、希土類金属がヘテロ原子に対し特異な親和力を持つことに着目。希土類金属に属するスカンジウムやイットリウム触媒を用いて、酸素原子と炭素-炭素二重結合のあいだに適切な間隔を持つα-オレフィンを選んで反応させた。この結果、酸素原子を持たないオレフィンより速く、かつα-オレフィンを識別して立体選択的に重合が進行。また、1気圧のエチレン雰囲気下で反応を行うと、共重合反応が速やかに進行した。

さらに、硫黄やリン、窒素、セレンなどのヘテロ原子を含むα-オレフィンも同様に、エチレンと速やかに共重合することができ、これらの共重合反応において、ヘテロ原子を含むα-オレフィンの量や用いる希土類触媒の種類を調節することによって、モノマー組成比を広い範囲で制御できる高分子量の共重合体を得ることに成功した。同研究グループは、このヘテロ原子によって促進されたオレフィン重合を、Heteroatom-assisted Olefin Polymerizationの頭文字をとって「HOP」と名付けている。

得られたポリマー材料はポリオレフィン部位と極性ユニットの両方を任意の割合で持つため、同研究グループは、少量の添加で効果を発揮する環境調和型のポリオレフィン改質剤としての用途展開に加え、従来のポリオレフィンとさまざまな極性ポリマー材料などをつなぐ、異種材料の接着剤としての応用が期待できると説明している。

希土類金属触媒によるエチレンと極性モノマーとの共重合反応 (画像提供:理化学研究所)