3児のママ産婦人科医の実体験〜ドクターの母乳育児ストーリー

−−善方先生の最初の出産は?

もう約20年前になりますが、初めての出産のときは、すでに産婦人科医として大学病院に勤務していて、夫の実家であるよしかた産婦人科でも働いていました。ですが、切迫早産になってしまって、3ヵ月よしかた産婦人科に入院したんですよ。大学の方は休みをいただいたんですが、よしかた産婦人科は完全に休むことができず、ちょこちょこ診察に行ってはお腹の張りを感じて休んで…という繰り返しでした。

お腹が張ってきたときの不安な気持ちは今でもはっきり覚えているので、診察で患者さんに接するときにこの経験が活きていますね。

−−出産後は母乳で育てたのでしょうか?

出産や母乳育児については、その時代の状況や流れがあります。約20年前は、母乳育児はこだわっている人があえて実践するイメージで、人工乳(ミルク)のほうが栄養があるから優れていると言われていた時代でした。大学病院で産んだのですが、当時は母子別室が当たり前で、出産したらすぐに赤ちゃんは新生児室に連れて行かれ、母は1人で寝るんですね。1人でいると、赤ちゃんがどうしているか不安になってきて、必死に新生児室まで会いに行くんですけど、新生児室がまた遠いんですよ(笑)。 産婦人科医と言っても、妊娠からお産までの知識はありますが、母乳育児については何も知らず、出産した病院でも右のおっぱいを5分吸わせて、左も5分吸わせましょう、と習っただけ。体重計に乗せて、1日あたり50g増えていなかったらミルクを作ってあげましょう、ということで、助産師さんがミルクの作り方を教えてくれました。それだけです。

−−授乳の仕方などは教えてくれないのですか?

新生児室で経産婦さんが母乳をあげているのを見て、「どうやってあげるんですか?」と聞いて、見よう見まねでやってみただけです。退院後は実家に里帰りしましたが、母は私を慰めるつもりで「無理しなくても人工乳で大丈夫」と言うし、母乳をあげたくてあちこちに相談しても「ミルクは栄養がしっかり入っているから心配しないで大丈夫!」と言われるばかりでした。結局、1ヵ月のときには完全にミルクになってしまいました。1人目のときは、母乳育児をする環境がなかったですね。