コマツとNTTドコモ、SAPジャパン、オプティムは7月19日、建設業務における生産プロセスに関与する土・機械・材料などのあらゆる「モノ」をつなぐ新プラットフォーム「LANDLOG(ランドログ)」を10月に建設事業者向けに提供開始することを目指し、4社共同で企画・運用することに合意した。なお、10月に4社でLANDLOGの運用などを手がける新会社の設立を予定している。

「LANDLOG」の概念図

国内の建設業界では技能労働者約340万人(2014年時点)のうち、1/3にあたる約110万人が今後10年間で高齢化などにより、離職する可能性が高いことが想定されており、労働力不足が課題になっている。

各企業は、生産性向上を目的とした測量、施工、検査などの建設生産プロセスのICT化を進めているものの、建設生産プロセスにはさまざまな専門を有する複数の工事事業者が携わるため、各種データは事業者ごとに管理されており、建設生産プロセス全体を一元管理し、最適化する上で有機的に活用されていない現状があるという。また、生産性だけではなく現場の安全性を向上させるには、建設生産プロセス全体のデータの収集と一元管理するプラットフォームが有効だと指摘している。

さらに、外部環境も要因に挙げられる。政府は2016年度を「生産性革命元年」と位置づけ、「ICTの全面的な活用(ICT土工)」などの施策を建設現場に導入することにより、建設生産システム全体の生産性向上を図る「i-Construction」を2020年までに公共土木工事すべてへの適用を目指している。

加えて「未来戦略投資2017」において、建設現場の生産性を2025年までに20%向上し、建設生産プロセス全体を3次元データでつなぎ、さまざまなデータを利活用する新たな建設手法の導入を計画。

コマツのIoTの取り組みを支えてきたNTTドコモ、SAP、オプティムは、これらの課題と社会的ニーズに共通の認識を持ったため、建設生産プロセス全体のIoTの基盤となる新プラットフォームの企画・運用を4社共同で行うことを決定した。現在、コマツは建設現場向けに展開するソリューション事業としては「スマートコンストラクション」で運用しているプラットフォーム「KomConnect」を展開している。

「スマートコンストラクション」の概要

KomConnectは、施工現場ごとの建設生産プロセス全体の情報を収集し、蓄積、解析する機能を持つレイヤーと、プラットフォームに蓄積されたデータを活用して生産性向上および現場の安全に寄与するアプリケーションを提供する機能を有するレイヤーの2層で構成している。

このうち、情報の収集・蓄積・解析の機能については、4社で企画・運用するLANDLOGにより、施工会社などの要望に応じて、さまざまなアプリケーションプロバイダーにデータを提供していく。従来のKomConnectは建設機械による施工プロセスを中心に構築されたプラットフォームであるのに対し、LANDLOGは建設生産プロセス全体を包含する新プラットフォームとなる。

コマツ 代表取締役社長兼CEOの大橋徹二氏は「われわれは、2015年からスマートコンストラクションを展開しており、累計で3300カ所以上(2017年度6月末時点)の現場にサービスが導入されている。スマートコンストラクションは情報化施工からスタートし、現在は施工現場の見える化のステージだ。これを、建設・生産プロセス全体を3次元データでつなぎ、それに伴う人、機械、現場をはじめ、あらゆる『コト』を繋げるものに進化させる。施工現場を最適化することで、安全で生産性の高い施工現場を実現し、現場に新たな価値が創造される」と述べた。

コマツ 代表取締役社長兼CEOの大橋徹二氏

続けて、同氏は「オープンで未来の現場に寄与できるプラットフォームとしてLANDLOGを構築し、パートナーとともに運用していくことについて、合意した。今後、より多くのソリューションプロバイダーの参画を求め、日本だけでなく、グローバルに広げ、可視化されたビッグデータを解析し、施工全体を最適化する。価値あるアプリケーションも提供し、建設・生産プロセスのイノベーションを加速させていく」と期待を口にした。

各社の役割としてコマツは、変化する地形の3次元測量に関するノウハウの提供、建設生産プロセスへの投下資本(機械、人、資材など)の可視化に関するノウハウの提供、ドコモはLTE、LPWA、5Gなど無線通信に関するノウハウ、サービスの提供、IoTなどのソリューション構築とデータ収集・可視化・分析に関するノウハウの提供、SAPはデザインシンキングとSAP Leonardoによる新プラットフォームビジネスの支援、オプティムはAI・IoTおよびCloud IoT OS活用などに関するノウハウを提供する。

また、アプリケーションプロバイダーは建設生産プロセス全体の安全・生産性を向上させるため、新プラットフォームに蓄積されたさまざまなデータを用いて、アプリケーションを開発し、施工会社をはじめとしたユーザーに提供。今後、より多くの新規プロバイダーの参入を働きかけていく方針だ。

4社共同により新しいプラットフォームを構築する

今後、コマツはKomConnectの一部の機能を発展的にLANDLOGに委譲し、ソリューションアプリケーションを提供するプロバイダーの1社として建設現場の課題解決に集中して取り組む予定。新プラットフォーム「ランドログ」に建設生産プロセス全体のあらゆる「モノ」のデータを集め、そのデータを適切な権限管理のもとに多くのプロバイダーがソリューションアプリケーションを提供し、建設現場を支える多くのユーザーが利用し、安全で生産性の高い未来の現場の実現を加速させていくという。

左からSAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎氏、大橋氏、NTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏、オプティム 代表取締役社長の菅谷俊二氏