京都工芸繊維大学は、スーパーコンピュータ上での大規模フェーズフィールド法シミュレーションにより理想粒成長現象を再現し、その統計的ふるまいの正確な解明に成功したことを発表した。

同成果は、京都工芸繊維大学機械工学系の高木知弘准教授、北海道大学大学院工学研究院材料科学部門の大野宗一准教授、東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻の澁田靖准教授、東京大学情報基盤センタースーパーコンピューティング研究部門の下川辺隆史准教授、東京工業大学学術国際情報センターの青木尊之教授らによるもの。英国のオンライン科学雑誌Nature Partner Journal (npj) Computational Materialsに掲載された。

大規模理想粒成長シミュレーションのスナップショット。界面で区切られた多数のセル(結晶粒)の競合成長が再現されている。赤枠内は領域の一部の拡大図を示す

金属固体内の結晶粒の成長や、石鹸泡やビール泡の粗大化など、界面に区切られた多くの小区画(セル)が競合的に成長する現象は自然界において数多く見られる。理想粒成長は、このようなセル構造形成を考える上で最も単純化された理想化モデルである、理論・実験・数値シミュレーションの各方面から広く研究されてきた。しかしながら、理想的条件下で多くのセルの挙動を追跡することは実験や従来規模のシミュレーションでは難しく、現象の真の統計的ふるまいは未だ明らかにされていなかった。

同グループは今回、理想粒成長において古くから理論的に予言されてきた統計的定常状態が達成される一方で、定常状態における組織形態が古典的理論から大きく乖離することを明らかにした。同成果は、あらゆるセル構造形成現象の理解に対し有益な基盤を与えるものと期待されるとしている。