市場動向調査企業である米Gartnerは7月5日、2017年のPCならびにモバイルフォンの合計出荷台数は前年比で0.3%減となるとの予測を発表した。2018年には1.6%増に転じるとしているが、今後しばらくはほぼフラットの状態が続きそうで、もはや大きな成長は期待できそうにない。

表:タイプ別の世界のPC・モバイルフォン合計出荷台数の推移(2016~2019年)。Ultramobiles(Premium)は、ハイエンドWindows 10 ノートPCやApple MacBook Airなどが含まれる。Ultramobiles(Basic and Utility)はiPad系、Samsung ElectronicsのGalaxy Tab S2、Amazon Fire HD、Lenovo Yoga Tab3、Acer Iconia Oneなどが含まれる (単位:百万台) (出所:Gartner)

GartnerのRanjit Atwal調査ディレクターは、「全体的に、PC・モバイルフォン(スマートフォンを含む携帯電話)市場の出荷台数は長年にわたる成長を経て飽和期に達した。2017年、PCの出荷台数はわずかに減少するが、モバイルフォンの出荷台数はやや増加して、結果としてややマイナス成長となることが予測されるが、Gartnerの従前の予測からは若干の下方修正となる」と説明する。

2017年のPC出荷台数は前年比で3%の減少と予測されている、その減少率は、これまでに比べては低くなっている。OSのWindows 10への切り替えを進める新規購入によるものと考えられるが、DRAMやSSDなどのコンポーネントの価格が上昇を続けており、世界のPC市場にとっては逆風となっている。ただし、PCメーカー各社は、競争市場でシェアを落とすことを恐れて、そのコストの一部をマージンを引き下げることで吸収している段階にあり、消費者にとっては、コンポーネントの価格上昇の影響は軽微だという。

一方、スマートフォンの出荷台数は2017年に同5%増となり、約16億台に達すると見られる。エンドユーザーは、低コストの「ユーティリティ」フォンから、それより高価格の「ベーシック」および「プレミアム」フォンへと移行が進んでいるほか、購入サイクルが延長されるようになってきており、メーカーは買い替えを進めるため、他社と差異化できる新機種への依存度を増しつつある。

Samsungは、2016年にバッテリー問題を起こし、ユーザーの買い控えが生じたが、Galaxy S8とS8 Plusは、これまでのところ大きなインパクトで受け入れられているとGartnerでは見ている。「この幸先良いスタートは、Samsungのスマートフォン分野での回復を意味する」とGartnerの調査ディレクターであるRoberta Cozza氏は語っている。また同氏は、「2017年にプレミアムスマートフォンの成長が継続するかどうかは、Appleが投入するiPhoneの10周年記念モデルに大きく依存することが見込まれる。これは、過去のモデルチェンジよりももっと劇的な機能やデザインのアップグレードをもたらすはずだ」としており、拡張現実や機械学習などの分野における新しい技術や機能の搭載がどこまでユーザーに響くかがポイントになるとする。

なお、ベーシックなスマートフォン市場は、2017年は同6.8%増となり、代数的には約6億6600万台が出荷される見通しだという。Cozza氏は、「ユーザーは、ローエンドのユーティリティ機種に比べて、基本的な機能を有するスマートフォンによりもたらされる大きな価値をすでに受けいれ始めている。ミッドレンジおよびハイエンドのスマートフォンの平均販売価格が上昇傾向にある現在、プレミアムなフィーリングと機能を備えたベーシックスマートフォンの市場投入を積極的に図っている中国メーカー勢が勢いを増す可能性が高い」としている。