PwCは、今年で10回目となる消費者の購買行動に関する年次調査「トータル・リテール・サーベイ2017」を行い、その結果を発表した。この調査は、消費者の購買行動とさまざまな購買チャネルの利用状況を把握し、比較するために行ったもので、29の国と地域を対象に、24,471人のオンライン購買者から回答を得た。

今回の調査から、消費者の買物や小売業に対する意識と行動が大きく変わってきていることが確認され、スマートフォン(スマホ)からワンクリックでアクセスできるグローバル市場が存在し、選択肢の豊富さ、利便性、価値に対する要求が飛躍的に増大していることがわかったという。

同社では小売業者がこれからも消費者のニーズに応え、存続していくためには、従来の発想から離れ、新しい分野に投資し、事業モデルを転換していく必要があり、PwCは本レポートにて、今回の調査結果および関連する調査資料をもとに、小売業者が競争に打ち勝つために重要な10の投資分野を特定した。

以下でそれを紹介する。

1.モバイルアプリではなく、モバイルサイトへの投資を

消費者が小売業にアクセスする手段としては、PCよりも、スマホとタブレット端末を合わせたモバイルショッピングの比率の方が大きく、この傾向は年々増加しているが、2016年の米国のアプリプロバイダー上位企業において、モバイルアプリのダウンロード数が前年比20%減少したという結果も出ており、小売業では、スマホ用のサイトがPC用のサイトよりも見た目や機能の面で劣っていないかの確認を含め、最適化を図ることが急務である。

購買チャネルの利用状況の推移

2.リアルとデジタル両面での人材への投資が必要

ほとんどの消費者は、来店前にネット、特にソーシャルネットワークを通じて情報収集を行っており、小売業側にソーシャルマーケティングを的確に遂行できる人材の確保が急務であり、店舗スタッフの深い商品知識やテクノロジーを活用したサービスなどが消費者から期待されている。

3.データ収集のみならずビックデータ分析にも注力

小売業は大量のデータを集めうる立場にあり、データの分析と活用によって、より的確できめ細かい付加価値を消費者に届けることができるか、今後ますます問われることになる。

4.Amazonへの対応戦略

全世界で約28%がAmazonの登場により他の小売店での買物が減ったと回答、また、約18%は他の小売業者のウェブサイトでの買物頻度が減ったと回答しており、この状況への対応策として、小売業者は、リアル店舗と店舗スタッフの存在を生かし、自らの強みを強化することへの投資が求められている。

Amazonが購買行動に与える影響

5.従来の広告ではなく、ブランドの「ストーリー」の創造を

ソーシャルメディアやWebサイトは、購買のきっかけとなる最大の情報源だが、これらで伝えるべきメッセージは、単に価格や商品のスペックではなく、商品ブランドや企業ブランドを取り巻くストーリーであると言える。

6.より安全な情報プラットフォーム

情報セキュリティは、もはやIT部門の課題ではなく、経営レベルの課題であり、すべての接点で安全なプラットフォームを確保する必要がある。

7.ロイヤルカスタマーの維持に工夫を

企業または商品のブランドにこだわりるロイヤルティーが高い顧客を維持しつづけるために、小売業者は会員ポイント以外の付加価値の提供に投資をする必要がある。

8.店舗ネットワーク全体ではなく、ショールームにフォーカスを

ネットでの購買が増えていると同時に、リアルに商品を見てみたい/試してみたい/会話をしてみたい、という消費者の声は依然として根強いものがあり、これから投資すべき拠点は、単なる店舗ではなく、ショールームとして活用できる店舗と言える。

9.ブランド商品の信頼性の確保を

今年の調査では、ラグジュアリー商品についての質問も設けており、その結果、消費者はブランド商品の購買に不安を感じており、依然としてネットでの購買には慎重であることが判明している。

10.健康・ウェルネスの提供への新規投資を

小売業の店頭でヘルスケアや医療分野のサービスを受けることへの不安/抵抗感が減ってきており、ウェアラブル端末の消費者への普及が進んできている。この端末との連携することで、新しいヘルスケア/医療サービスを小売業が作り出せるチャンスが出て来ている。