アルバックは7月6日、パワーデバイスであるIGBTに向けた、低加速・大電流イオン注入装置「SOPHI-30」ならびに高加速対応イオン注入装置「SOPHI-400」の2機種を発表した。

左がSOPHI-30、右がSOPHI-400の外観

同社はこれまでにもパワーデバイス向けイオン注入装置として、はばひろいニーズに対応することが可能な中電流イオン注入装置「SOPHI-260」を販売してきた。しかし、IGBTは縦方向に電流を流すデバイスであり、チップを薄くするとオン抵抗とスイッチング損失の改善を図ることができるため、50~100μm程度の薄ウェハニーズが高まっているが、薄いウェハへのイオン注入には低加速の処理が必要であり、SOPHI-260では、対応はできるものの、スループットが稼げないといった課題があった。

SOPHI-30は、そうした課題を解決することを目的に開発されたイオン注入装置で、特に、近年のIGBTの傾向であるIGBTとFWD(Free Wheeling Diode)を1チップ化した「RC-IGBT」を製造する際に行われるウェハ裏面のコレクタ(Collewctor)部のP型部分をN型への反転処理が適用プロセスとして想定されている。

低加速であるため、イオン源からウェハまでの距離も長くとる必要がなく、0.5mという短距離を実現しつつ、大電流(例:20keV 215ions/cm2)での処理が可能であるため、処理時間が従来比1/60へと短縮することが可能(1枚当たり10分が10秒)となった。また、イオン源からウェハまでの距離が短く、イオン源も小型化できたため、フットプリントも従来比1/3の1.7m×2.75m×2mを実現したという。

一方のSOPHI-400は、IGBTの耐圧、スイッチング特性改善のためのPの深い注入を可能とするイオン注入装置で、最大2400keVで、裏面工程のフィールドストップ層へのエネルギー注入ができることが特徴となっている。

また、Pのイオン注入の後は、高価なレーザーアニールによる熱処理が必要であるが、SOPHI-400では、Pの代わりにH(水素)を注入することで、特性改善を図ることも可能。この場合、400℃程度の低温プロセスでの活性化が可能となるため、レーザーアニールではなく、ファーネス(アニール)装置で処理することができ、トータルの装置コストを低減させることも可能となる。

なお、アルバックでは、IGBTの特性プロセスに向けた装置、ということもあり、発売1年でSOPHI-400で5台、SOPHI-30で10台程度の販売を目指すとしている。

RC-IGBTの構造と、SOPHI-30/400の適用プロセス部位