大阪大学(阪大)は7月7日、オートファジーによる細胞内の細菌除去が血管内皮細胞では起こらないことを発見したと発表した。

同成果は、大阪大学大学院医学系研究科遺伝学 hiou-Ling Lu研究員、川端剛特任助教、大学院生命機能研究科細胞内膜動態学/大学院医学系研究科遺伝学 吉森保教授らの研究グループによるもので、7月6日付けの米国科学誌「PLOS Pathogens」に掲載される。

自らの細胞内の構成成分を分解する仕組みであるオートファジーは、もともと栄養が足りないときにエネルギーなどを確保する経路として知られていたが、近年になって損傷を受けたミトコンドリアなどさまざまな有害因子を選択的に分解し、細胞を助けていることが明らかになってきた。細胞内に侵入してきた細菌も例外ではなく、皮膚などの上皮細胞でオートファジーにより細菌を食べて殺していることがわかっており、これをゼノファジーという。しかしながら、上皮細胞以外でのゼノファジーについてはあまりよくわかっていなかった。

今回、同研究グループは、細菌が血管内に入り込んで感染症が重篤化したときに細菌の感染のターゲットとなる血管内皮細胞に着目。A群レンサ球菌などのさまざまな細菌をヒト培養細胞に感染させたところ、上皮細胞内では増殖しないにもかかわらず、血管内皮細胞では増殖が止まらずに細胞死を引き起こすことを明らかにした。電子顕微鏡による解析の結果、血管内の内皮細胞はオートファジーによる細菌の除去ができておらず、結果として細胞内で細菌が増殖してしまうことがわかった。

オートファジーは、細胞内に侵入した細菌にユビキチンというタンパク質が付くことで開始するが、この標識が内皮細胞では上手く付いていなかったという。そこで、細菌をあらかじめユビキチンでコーティングしてから血管内皮細胞に感染させたところ、細菌はオートファジーによって除去された。これにより、血管内皮細胞にはオートファジーにより細菌を除去するための潜在的な能力は備わっていると考えられる。

同研究グループは今後、血管内皮細胞で細菌に特異的なオートファジーを誘導する方法を開発することで、新たな感染症治療法につなげていきたい考えだ。

血管内皮細胞内で細菌が増殖する仕組みの概要 (出所:阪大Webサイト)