北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は7月4日、高イオン伝導度と0.9以上の高リチウムイオン輸率を併せ持つ高性能リチウムイオン輸送性電解質の開発に成功したと発表した。

同成果は、JAIST先端科学技術研究科物質化学領域 松見紀佳教授、ラーマンヴェーダラージャン助教らの研究グループによるもので、7月1日付けの国際科学誌「Electrochemistry Communications」オンライン版に掲載された。

リチウムイオン2次電池の特性を左右する部材として、正極・負極以外にも電解質、バインダー、セパレータなどさまざまな材料が重要性を有する。特に、電解質に求められる特性としてはイオン伝導度、リチウムイオン輸率、電気化学的安定性などがあるが、なかでも有機電解質は一般にリチウムイオン輸率が非常に低く、ポリエーテル誘導体では室温で0.1~0.2程度、新型電解質として期待されているイオン液体においても0.2~0.3にすぎず、大半はエネルギーの貯蔵に寄与しないアニオンが主に系内を移動していた。

今回、同研究グループは、従来相溶しなかったイオン液体とホウ酸エステル化合物の相溶性を体系的に調べることにより、一部のTFSI[bis(trifuloromethanesulfonyl)imide]アニオン/FSI[bis(fluorosulfonyl)imide]アニオンを有するイオン液体が、メシチルジメトキシボランと均一相溶することを見出した。

これらの組み合わせにおいて、混合電解液はイオン液体自身よりも低い粘度を示した。また、いずれの電解液も非常に高いリチウムイオン輸率を示し、とりわけFSI系イオン液体とメシチルジメトキシボランが体積比1/2(v/v)で相溶した混合電解液は、0.93という異常に高いリチウムイオン輸率を示すことがわかった。

また、FSI系イオン液体/メシチルジメトキシボラン系は、電気化学的安定性においても5V程度の電位窓を有し、高電圧型の電極材料の使用にも耐える特性を示している。実際にハーフセル(Li/電解質/Si)を構築し充放電試験を行ったところ、可逆的な充放電挙動と共に非常に高い放電容量(>2500mAh/g)を示した。

同研究グループは今後、セル構成や充放電条件を最適化し、最も優れた特性を有する蓄電デバイスの創出に結びつけたい考えだ。

イオン液体/メシチルジメトキシボラン体積比とリチウムイオン輸率の関係 (出所:JAIST Webサイト)