JR東日本は4日、次世代新幹線の実現に向けた試験車両の新造について発表した。新造する試験車両は「E956形式新幹線電車」で10両編成、愛称名は「ALFA-X」(アルファエックス)とされ、2019年春の落成を予定している。その後は研究開発の評価のための試験プラットフォームとして、長期的に活用していく計画だという。

新造する試験車両E956形「ALFA-X」先頭車両の形状イメージ。上がAタイプ、下がBタイプ(画像はすべてJR東日本提供)

愛称名「ALFA-X」は「Advanced Labs for Frontline Activity in rail eXperimentation」から取られ、「最先端の実験を行うための先進的な試験室(車)」を意味する。同社の技術革新中長期ビジョンにおける「次世代新幹線の実現に向けた開発」を進めるための試験プラットフォームとして、「さらなる安全性・安定性の追求」「快適性の向上」「環境性能の向上」「メンテナンスの革新」を開発コンセプトに掲げ、次世代新幹線でこれまでの安全・高速な移動手段の提供に加え、新たな価値の提供もめざすとしている。

JR東日本は過去に「STAR21」(試験期間1992~1998年)で試験最高速度425km/h、「FASTECH360」(試験期間2005~2009年)で試験最高速度398km/hの実績を残しており、2019年から試験を行う「ALFA-X」も試験最高速度は400km/h程度とされている。速達性を高めるため、営業運転での最高速度360km/hの可能性を技術的に検証していくという。地震対策ダンパやクラッシャブルストッパなど脱線しにくくさせるための開発品を搭載し、着雪しにくい車体構造の試験も行い、雪や寒さに強い新幹線をめざす。

快適な車内空間をめざし、家やオフィスのように車内で過ごせるサービスを実現するための開発にも取り組むほか、動揺防止制御装置の搭載、車体下部やパンタグラフの低騒音化、吸音性・遮音性の高い車体構造の試験も実施する。省エネ運転に関する技術の試験も行い、トンネル突入時の圧力波を抑制するために新たな先頭車両の形状も検証する。

台車に搭載した地震対策ダンパで車体の大きな揺れを抑制。強い衝撃を受けた際、クラッシャブルストッパが押し潰されることでストッパ間の間隔を広げ、衝撃を緩和し、車輪とレールの間に強い力を発生させないようにする

曲線通過時は車体傾斜制御装置によって車体を傾斜させ、動揺防止制御装置と上下制振装置で左右・上下方向の揺れを抑えることで乗り心地の向上を図る

試験車両ではデータを活用したCBM(状態基準保全)の実現もめざす

「ALFA-X」では地上設備や車両の各機器をモニタリングする装置も搭載。各機器のモニタリングにより、車両の状態を自律的に判断して安全性向上を図るとともに、故障を予兆し、未然に防止することで輸送品質向上にも取り組む。データを活用した安全・安定輸送に加え、CBM(Condition Based Maintenance、状態基準保全)の実現もめざす。