東大、ガラス状態の固体で起きるミクロな「雪崩」現象の機構を解明

東京大学(東大)は6月29日、粒子配置が乱雑なまま凍結したガラス状態の固体が、突然「雪崩」のような粒子運動を起こし、秩序だった状態に変化する「雪崩」現象の機構を、数値シミュレーションにより解明したと発表した。

同成果は、東京大学生産技術研究所 田中肇教授、ジョン・ルッソ特任助教(研究当時、現・ブリストル大学講師)、柳島大輝学振特別研究員らの研究グループによるもので、6月29日付の英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載された。

ガラスとは一般に、液体のような乱雑な構造を持ったまま固まった固体全般のことを指している。ガラス状態にある物質は、結晶とは大きく異なる性質を持ち、材料として注目されているが、本質的に非平衡な状態であるため、長期間での安定性に問題がある。たとえば、長い時間がたつと、ガラスの中に微結晶が生じたり、エイジングと呼ばれる遅い変化により大きさが変化したりという現象が知られている。このような現象が、どのような機構で起きるのかは、これまで未解明であった。

同研究グループは今回、多数の球形粒子の配置が乱雑なまま固まった「剛体球系ガラス」を対象としたシミュレーションを行った。この結果、粒子配置の乱れが大きく隙間の多い数個の粒子集団の運動が引き金となり、雪崩のような急激な構造変化が起きることが明らかになった。このことは、雪崩現象のきっかけとなる粒子運動が、不安定な構造が安定な構造へ変化する力を駆動力として起きていることを示している。

さらに、その少数の粒子が移動することで、それまでガラスの骨格構造が保っていた力のバランスを壊し、その結果、大きな「雪崩」となって系全体に波及すること、さらには骨格構造の力のバランスが回復することで、雪崩現象が終息することが明らかになった。これは、ガラスの固体のような性質を生み出しているのが、全体の力のバランスを保つ骨格構造であることを示唆した結果であるといえる。

今回の成果について同研究グループは、医薬品、半導体材料、光学材料、バイオ試料の低温保存など、ガラス状態の保持が欠かせない材料の開発に新たな指針を与えるものと説明している。

粒子運動が局所的に引き起こされた(黄丸)後、「雪崩」のような急激な構造変化が全体に波及する(赤丸)。そして、雪崩現象に伴い骨格の組み換えが起きる(赤線)。雪崩現象前に力のバランスを保っていた骨格構造(青線)の大部分は変化しない (出所:東大Webサイト)



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