市場調査会社の仏Yole Developpementは6月29日(仏時間)、CMOSイメージセンサ(CIS)業界の動向調査を報告した2017年版レポート「Status of the CIS Industry 2017 Report」を発行し、その中で、「2016年に116億ドルだったCIS市場は、今後数年にわたって成長を続け、2016~2022年における年間平均成長率は10.5%で拡大する見込み」とし、その牽引役として、スマートフォン(スマホ)向けが依然として大きなシェアを占めるものの、セキュリティや車載用途などでの市場拡大が期待できることを明らかにした。

CMOSイメージセンサ市場拡大のきっかけはiPhone

現在のCIS業界は、というと、ソニーがスマホ分野でトップの地位を築いているが、セキュリティ向けや自動車向け分野では、競争の段階にあるといえる。映像(静止画/動画問わず)を撮影するというニーズはまだ高く、ディアルカメラの登場など、新たな技術開発も継続して進められている。

YoleのCIS調査チームスタッフである元STMicroelectronicsのPierre Cambou氏は「スマホ時代の先駆けとなった最初のApple iPhone発売から10年が経過したが、iPhoneの登場以降、CMOSイメージセンサは、スマホ市場の拡大と技術革新ニーズの恩恵を受け続けてきた。そうした新たな用途、新たなデバイス、新たなテクノロジーによって、スマホは、写真とビデオの在り方を完全に変えてしまった」とiPhoneの登場がCIS市場躍進のきっかけとなったとしている。

また、スマホ市場の出荷台数の減速を踏まえ、「確かにスマホの数量の伸びは飽和気味だが、CISとしては、デュアル化やアイリス、および3Dカメラの新規採用のおかげで安定した成長を続けることができてきた。これらの新たなニーズは、業界のけん引役を、フォームファクタや画質からインタラクティビティ(対話型の双方向通信)に変化させている」とし、カメラの役割が増していることを強調する。

CISの活用は現在、スマホから自動車、セキュリティ、医療といった分野に広がりを見せており、しかもカメラ単体ではなく、ディープラーニングなどの技術と融合される形で活用されることで、新たな価値を生み出そうとしている。ドローンや生体認証、AR/VRといった新興アプリケーションは、CISの技術革新に頼るところが大きいといえる。逆に言えば、将来はスマホではなく、そうした3Dイメージセンシング関連がCISの市場の様相を大きく変える可能性があるといえるだろう。

CMOSイメージセンサの現在と未来の予測。2010年代はセンシングとコンピューティング時代から、2020年代前半は人工知能(AI)の時代に、そして2020年代後半は認知の時代へと進化していくことが見込まれる (出所:Yole Developpement)