帯広畜産大学は28日、原虫病研究センター福本晋也准教授、連合獣医学研究科獣医学専攻3年の曽賀晃氏らが、マウスマラリア原虫において、効率的な遺伝子組換え体作製法を確立したと発表した。本成果により、遺伝子組換え体を短時間かつ低コストで作成でき、治療薬・ワクチン開発の進展が期待される。

世界三大感染症の1つであるマラリアは、年間50万人の命を奪っている。対策として、さまざまな研究が行われているが、未だ有効なワクチンの開発には至っていない。

新たな感染阻止法を開発するには、マラリア原虫からヒトに感染が成立するメカニズムの解明が必要だ。そのためには一般的に、安全性が高いマウスマテリア原虫を実験モデルとして用い、標的遺伝子についての遺伝子組換え体を作製し、マウスを用いた実験を通してその機能を調べる方法が用いられる。

しかし、その遺伝子組換え体の作製法は、多くの時間・費用がかかる、効率の悪いものであったため、本研究では効率的な遺伝子組換えマウスマラリア原虫作製法の開発を試みた。

今回、従来の作製法の一部に、試験管内短時間培養法を適応することで、これに成功した。さらに、本法を用いて遺伝子組換え体を選抜するための目印となる、新たなマーカー・システムを構築した。

本法は、従来に比べ効率的に遺伝子組換え原虫を作製できることに加え、時間・コストの大幅な削減を可能にする。さらに、マーカー・システムを構築することで、操作できる遺伝子数も増加させることが可能となる。今後、本法を用いたさまざまな遺伝子機能解析により、新たな治療法・ワクチン開発にむけた研究の進展が期待される。

本研究は科学研究費の支援のもと、本学原虫病研究センターにおいて実施された。なお、研究成果は科学誌「Scientific Reports」に 6月21日に掲載された。