台湾TrendForceの半導体メモリ調査部門であるDRAMeXchangeは6月26日、DRAMの2017年第3四半期(7~9月期)における大口顧客に対する平均販売価格(ASP)が、供給不足が解消されていないことを背景に、前四半期比で5%ほどさらに上昇する見通しであることを明らかにした。すでに同社は、サーバDRAMモジュールの平均価格が第3四半期も継続して上昇する見通しを公表していたが、今回の予測では、この価格上昇の流れがDRAM全般におよぶことが示される結果となった。

DRAMの不足はいつまで続くのか?

DRAMeXchangeの調査ディレクターであるAvril Wu氏は、「スマートフォン(スマホ)市場を中心としたDRAMが搭載される最終製品の需要は、2017年は強くはないものの、DRAMを製造するためのプロセス微細化、特に20nm未満への移行における歩留まりの向上に時間がかかっており、全般的に移行ペースが鈍化している。それがDRAMの供給不足の最大のボトルネックとなっている」と背景を見ており、こうした歩留まりの向上は、短期間で一気に改善するものではないため、DRAMの供給不足は2018年まで続くと見込まれ、その間のDRAMのASPは高止まり続けることになるだろうとしている。

従来、DRAMの適用先は、主にPCとスマホといった巨大なアプリケーションを対象としていたため、タイプ数が少なく、仕様も似ていたことから、そうした最終製品市場の需要変動、そしてマクロ経済環境の変化がDRAM価格に大きく影響することを意味していた。

しかし近年になると、グラフィック処理やクラウドコンピューティング、車載エレクトロニクス、機械学習のためのハードウェアアクセラレーションなど、従来のPCとスマホだけ、といった市場環境とは異なるDRAMの適用先が次々と登場してきてくるようになってきた。しかも、こうした新規市場の分野では,一般的にライフサイクルの初期段階で、顧客の要求にこたえて、メモリを含む関連電子部品のカスタマイズを高度に行う必要性が求められるようになってきた。

こうしたカスタマイズは、DRAMサプライヤにとって、限りある生産能力を、どれにどれくらい配分するのか、といった問題を複雑化させることとなる。しかし、こうした新規アプリケーション分野に向けたDRAMは、供給量はPCやスマホに比べては少ないものの、ライフサイクルが長く、価格の大きな変動も起こりにくいため、全体的名価格動向を安定させる、という点では重要な意味合いを持つことにもつながるという。

なお、DRAMeXchangeでは、スマホやPCの出荷が爆発的に上向くことはない一方で、データセンターの建設や家電ベンダの年末の繁忙期に伴う需要増加によりDRAM市場全体としては争奪戦の様相を呈し、価格の押し上げが続く見通しを示しており、すでにスポット価格の上昇や、サーバ向けDRAMモジュールなどから、そうした傾向を読み取ることができると説明している。