名古屋工業大学(名工大)は6月26日、光学活性アレニルニトリル化合物の高立体選択的合成法を開発したと発表した。

同成果は、名古屋工業大学大学院工学研究科 中村修一准教授、大阪大学大学院理学研究科 舩橋靖博教授らの研究グループによるもので、6月19日付けの独化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。

光学活性化合物とは、構造式が同じで左右対称な一対の化合物のことで、最近では医農薬品などに広く使用されている。構造式は同じでも生体への作用は2つでまったく異なるため、医農薬品類のコストダウンや副作用の低減を実現するためには、有用な効果を持つ方の物質だけを効率良く選んで合成する高立体選択的合成法の確立が求められる。

同研究グループが対象としたアレニルニトリルは、抗生物質や胃腸薬などに含まれるアレン部位と、精神疾患等の治療薬や除草剤などに含まれるニトリル部位を有した化合物。2つの有用部位を併せ持つことで、他の物質との合成時に新たな薬効が生まれる可能性が期待されるが、有用な効果を生み出すための立体制御が難しく、これまでアレニルニトリルを用いた立体選択合成は未開拓の研究領域であった。

アレルニトリルの構造式 (出所:名工大Webサイト)

今回の研究では、膨大な配置パターンのなかから作り出したパラジウム触媒11種をスクリーニングし、そのなかから高立体選択合成に最適な配置を持つ触媒を発見。同パラジウム触媒を用いて、医薬品の原料として広く使われているイミンとアレニルニトリルの高立体選択的反応に成功した。この合成は、g単位での合成に成功しており、kg単位での大きな合成スケールにも適用可能であることが考えられるという。

今回成功した高立体選択的合成法 (出所:名工大Webサイト)

同反応によって得られた化合物の活用法は現状未知数であるというが、同研究グループは、今後の研究により、医農薬品類のコストダウンが期待されるだけでなく、新薬開発の可能性も秘めていると説明している。