米国・カーネギー研究所と中国・燕山大学の共同研究チームは、高強度で軽量、ゴムのような弾性と導電性を兼ね備えた新しい炭素材料「圧縮ガラス状炭素」を開発した。宇宙航空、軍事分野など幅広い用途での利用が期待されている。研究論文は、Science系列のオープンアクセス誌「Science Advances」に掲載された。

圧縮ガラス状炭素のイメージ。赤色の球の部分はダイヤモンド構造の炭素原子、黒色の球の部分はグラフェン構造の炭素原子を表している(出所:カーネギー研究所)

今回の研究では、ガラス状炭素(glassy carbon)を出発材料とし、これに温度1000℃前後、圧力25GPa(大気圧の約25万倍)といった高温高圧をかけて、新しい構造の炭素材料を作り出す実験を行った。

ガラス状炭素は、ガラスとセラミックの性質をあわせもった炭素材料である。構造的には、炭素原子の不規則なsp2結合からできており、最大3000℃の高温耐性(不活性ガス中)、高強度、低密度といった特徴がある。

このガラス状炭素を極端な温度圧力条件に置くことによって、原子レベルの構造を変化させ、さらに新しい材料を作る研究はこれまでにも行われてきた。たとえば、常温・超高圧下では、低温合成材料と呼ばれる材料が作り出されている。これはグラフェンにみられる炭素原子のsp2結合とダイヤモンドにみられるsp3結合が融合した材料であるが、常圧に戻したときに構造を維持できないとされていた。また高温高圧条件では、sp3結合のナノ結晶ダイヤモンドが合成されると報告されていた。

今回合成された圧縮ガラス状炭素は、低温合成材料と同じくグラフェン的なsp2結合とダイヤモンド的なsp3結合が組み合わさったものであるが、800~1000℃といった高温条件で合成されており、常温常圧に戻しても構造が保たれるという特徴がある。合成プロセスの温度圧力条件などを調整することによって実現したとする。

高圧の合成条件下では、ガラス状炭素内のランダムな層がさまざまな形に崩れては合体し、互いにつながる。この過程では、結晶材料のような長距離秩序はみられないものの、ナノスケールの狭い範囲では空間的に組織化されたアモルファス構造が作られると考えられている。

同材料は、一般的なセラミック材料の2倍以上の圧縮強度、局所的な変形に対する弾性復元力の高さといった特性があると報告されている。また今回の方法は、他の種類の新材料を合成するためにも有効であると研究チームは主張している。