大阪大学は、同大学大学院工学研究科の萩原幸司准教授、中野貴由教授らの研究グループが、NbSi2(ニオブダイシリサイド)/MoSi2(モリブデンダイシリサイド)を組み合わせた複相シリサイド合金について、実用化における大きな問題点であった室温靱性と高温強度の向上を、Cr(クロム)とIr(イリジウム)という元素の微量添加によって実現したことを発表した。この成果は6月21日、英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

NbSi2/MoSi2複相シリサイド合金に、Cr、Irを微量添加することで発達する特徴的な「格子ラメラ組織」

模式図(出所:左右とも大阪大学Webサイト)

近年、CO2排出量低減のために、発電所等にて1400℃以上での高温使用に耐え得る超高温構造材料の開発が早急に求められている。この実現のために研究グループは、軽量、高融点を有する遷移金属シリサイドである「複相シリサイド合金」を2000年初頭に開発し、研究を進めている。

同材料はこれまで、C40-NbSi2、C11b-MoSi2相が板状にそれぞれ交互に並んだラメラ組織を有し優れた力学特性を示すものの、特定の方向に力が負荷された際に、強度や靱性が低く、このことが実用化への課題であった。

今回、研究グループは、複相シリサイド合金にCrとIrの2つの元素をそれぞれ0.5at.%という微量を同時添加することで、ラメラ組織に加え、特徴的な「格子ラメラ組織」を発達させることに成功した。

この材料の力学特性を評価したところ、従来の複相シリサイド合金で見られた優れた力学特性を保持しつつ、かつ特定方向への強度・靱性低下を同時に抑制可能であることがわかった。

NbSi2、MoSi2が示すC40、C11b構造

なお、同材料は、1400℃という超高温度まで高強度を維持するこれまでにない新材料である。今後、飛行機ジェットエンジンのタービンブレード等にて現在使用されている耐熱合金である「Ni(ニッケル)基超合金」(耐容温度~1100℃)と置き換えることで、熱効率を大幅に向上させ、CO2排出量の大幅な削減が期待されると説明している。