大自然とガンの関係性とは

東京への人口一極集中が叫ばれて久しいが、中には都会の喧騒を離れ、自分の生まれ育った地方やなじみのある地へと移住する人たちもいる。都会には都会の、そして田舎には田舎の魅力がそれぞれあるわけだが、「田舎パワー」には思わぬ健康面でのメリットがあるのかもしれない。

海外のさまざまなニュースを伝える「MailOnline」にこのほど、「田舎暮らしとガンの関係性」にまつわるコラムが掲載された。最近発表された研究によると、自然豊かな田舎での生活はガンとの闘病によいかもしれないという。

これまでの研究は、病院が近隣にない地方在住の人の方が死亡リスクが高いという結果を示すものが多かった。例えばシェフィールド大学の研究者グループによると、原因の如何に関わらず、病院から遠方に居住している人の方が、そうでない人と比べて死亡リスクが高かった。このグループが2007年に公表したデータでは、病院から家の距離が6マイル(約10km)離れるごとに死亡率が1%増えていた。

50万人を超える患者を評価したスウェーデンの研究者グループも2015年、同様の結論に達している。それはすなわち、心臓発作に見舞われた人の生存率は、病院から家の距離が6マイル離れるごとに3%ずつ減るというものだった。またイタリアで2015年に行われた研究によると、病院から家の距離は、ガン患者の診断、治療、結果、生活の質に影響を与える可能性があるという。

今回発表された研究はイースト・アングリア大学のチームが行ったが、その結果は従来のものとは全く異なるものだった。調査に参加したアバディーン大学のピーター・ムーチー博士によると、農村部におけるガン患者の生存率は低いというのがここ数年の通説だったが、今回の結果は真逆となった。

科学者グループは今回、都市部と農村部に住む926人の腸ガン患者を対象に、それぞれの地域での生存率の比較を行った。その結果、周囲が木や畑で囲まれた農村部に住んでいるガン患者は、都市部に住む人に比べて3年生存率が高かったという。そして、農村部に住んでいる人たちの方がガンによる死亡リスクが29%低かったとしている。

この理由について、地域ごとに差はあるだろうが、農村部だと家庭医の予約が取りやすいため、すばやく異変の兆候に気づけるためと専門家はみている。農村部では医者と患者の関係が緊密なものになりやすいというのも一因として考えられる。

※写真と本文は関係ありません


記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。