島津製作所は、画像データの取得速度を最大5倍に高めるとともに、X軸・Y軸の最大走査範囲をそれぞれ4倍に拡大し、大気中や液中においても真空中と同様に超高分解能な観察を実現する走査型プローブ顕微鏡のフラッグシップモデル「SPM-8100FM」を発売した。価格は5,000万円(ソフトウェア込み、税別)

高分解能走査型プローブ顕微鏡「SPM-8100FM」

走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、先端が半径数ナノメートルの微小なプローブ(探針)を備えるカンチレバーで試料表面を走査し、試料の形状や物性を測定する顕微鏡。同社が2014年1月に発売した前機種「SPM-8000FM」は、大気中や液中でも真空中と同様の超高分解能観察を実現したが、優れた観察性能に対し、データ取得時間の短縮が課題となっていたという。同製品では、前機種のスキャナを刷新するなど改良を進め、超高分解能な観察と高スループットを両立した。SPMの中でも、同製品は原子間力顕微鏡(AFM)に分類され、試料表面にプローブが接近した際に働く原子間力を検出することで、試料の表面観察や三次元的な構造計測をナノメートルオーダーで行うことができる。微弱な原子間力の検出には、極めて低ノイズかつ高感度な周波数変調方式(FM方式)を採用しており、超高分解能を実現したという。

同製品には、高速性に優れる「HTスキャナ」を採用したことで、極めて高い分解能を維持したまま画像データの取得スピードが前機種比で最大5倍に向上したとともに、最大走査範囲がX軸・Y軸それぞれで前機種の4倍となる10μmまで拡大している。結晶表面の原子・分子配列構造の高分解能観察を始め、高分子材料や生体材料の機能発現に影響を与える局所的な固液界面の構造解析など、当社のAFMが従来から得意とする液中もしくは大気中での観察において、時間の短縮が期待できるとのこと。

また、プローブを試料表面に接近させるための煩雑な操作を減らすとともに、試料にプローブが衝突する危険性を低減するため、プローブのアプローチ機能を充実させている。さらに、リアルタイムに装置状態をモニターしたい、観察画像を確認しながら効率良くパラメータの設定を行いたいといった要望に応えるため、プローブの動きに対応した信号を表示する機能の追加など、ソフトウェアの機能を拡張してデュアルモニターにも対応させたことで、操作性が大幅に向上した。前機種は操作の習熟に時間がかかる場合があったが、同製品は幅広いユーザーが短期間で使用できることを念頭に置いて開発しているという。

同製品は、金属や半導体、有機高分子材料、生体材料などの高分解能観察に加え、固液界面の局所構造も観察可能なため、高分子や触媒、電池、トライボロジー、ライフサイエンスといった多様な研究分野における先端的な基礎研究への貢献が期待できるということだ。