ダイナミックマップ基盤企画(DMP)は6月13日、クルマの自動走行などを実現する高精度な3次元地図データに対するニーズに対応することを目的に、国内の高速道路・自動車専用道路の地図データ整備に着手することを決定し、新たに産業革新機構(産革機構)および、ダイハツ工業からの出資、ならびに既存株主である三菱電機、パスコ、ゼンリン、アイサンテクノロジー、インクリメント・ピー、トヨタマップマスターからの増資を受け入れ、従来の企画会社から、事業会社に事業内容を変更し、社名も2017年6月30日付けで「ダイナミックマップ基盤株式会社(DMP)」へと変更することを明らかにした。

左からDMPの新たなコーポレートロゴを手にする産業革審機構の専務取締役である土田誠行氏、DMP代表取締役社長の中島務氏、三菱電機 常務執行役 電子システム事業本部長の岡村将光氏。コーポレートロゴは、ダイナミックマップのレイヤ構造をモチーフに取り入れたとのこと

同社の代表取締役社長を務める中島務氏は、「自動走行用の地図は、クルマが自動走行するために、搭載されているセンサなどの情報と併せて、自車の位置を把握するために必要なもの。単に、どこの道路を走っているのか、だけではなく、どのレーンで走って、その路面はどのような状況かを3次元で構築し、リアルタイムで提供する必要がある。これこそがダイナミックマップで、その根幹となるのが、高精度な地図情報である」と説明。世界に先駆けて開発した高精度地図の作製手法などが、そうしたニーズに応えられることを強調した。

ダイナミックマップは「動的情報」「準動的情報」「準静的情報」「静的情報」の4レイヤで構築され、3次元高精度地図は静的情報に位置づけられる。複雑なダイナミックマップをより効率的に生成するための技術開発がこれまで進められてきた

同社では、こうした高精度地図データは共通化されるが、自動車メーカー各社などへは、加工しやすいようにして提供され、各社が自社の自動走行システムの差別化に向けて活用されることとなる。「出資者である電気、測量、地図メーカーの知見を得たほか、国内自動車メーカー9社からの知見も得ることで、自動走行に求められる高精度地図の設計、開発、評価、仕様化などを進めてきた。DMPのバリューはまさに、こうしたオールジャパンの知見の集約にある」(同)とのことで、戦う体制が整ったとの判断から、事業会社化へと踏み切ったとする。

各株主が技術を持ち寄ることで、3次元高精度地図を効率よく生成することが可能となったほか、産行革審機構を中心とした資本増強により、事業基盤の強化が果たされ、ビジネスとしてこれから本格的な取り組みが進められていくこととなる

今後のスケジュールとしては、国内高速道路ならびに自動車専用道全線(上下線合計約3万km)の高精度3次元地図データの整備を2018年度までに完了する計画としている。ただし、事業として進めていく中で、2つの課題がまだ残されているとも説明している。

まずは2018年度までに全国の高速道路ならびに自動車専用道、約3万kmの整備を進めることとなる

1つ目は、継続した地図のメンテナンスの実現。通常の道路地図などは、年に1回以上、現地に赴いて道路がどうなっているかを確認するが、高精度3次元地図では、道路そのものよりも粒度の細かいレーンや標識、路面といった地物の単位で更新する必要があり、より効率よく認識する必要があり、現在、首都高速道路やヤマト運輸と連系した点群情報などの利活用によるメンテナンス手法の検討を進めているが、将来的にはIoTの活用なども検討していくことで、多くの情報の可視化につなげたいとしている。

2つ目は海外の地図との連系。隣同士で走行している自動走行車が用いている地図の精度が異なる場合、レーンの把握などに齟齬が生じる可能性などが考えられる。そのため、精度を整える必要がでてくるという。今回、日本国外における地図の高精度化に向け、同社はドイツのネット地図サービス大手Hereとの連系に合意したことを明らかにし、両社で協調していくことで、高品質地図データのグローバル展開を加速していきたいとする。

なお同社では、高精度地図の提供範囲を一般道にまで広げたいとしており、すでにその仕様検討も開始しているという。幅員5.5m以上の道路は日本全国で約35万km。「これをいかに早く提供するか。新たな手法も取り入れていかなければ実現できない」(同)とする一方で、自動車以外も活用する一般道の場合、パーソナルナビゲーションや防災・減災などへの活用も期待できるとしており、こうした取り組みを通じて、2020年代の前半には事業を軌道に乗せ、単年度の黒字化を目指したいとしている。

一般道の3次元高精度地図には、自動走行以外にもさまざまな用途が見込まれ、事業の拡大が期待される