少子高齢化にともなう労働人口の減少を受け、政府は外国人労働者の受け入れを推進している。マイナビニュースの別稿で日本の労働環境の「進んでいる点」について聞いたにもかかわらず、「進んでいない」という回答が多く見られた。そこで今回は日本の労働環境が「遅れている点」について聞いてみた。

Q. 日本の労働環境が「遅れている」と思ったことは? その理由は?

■ ワーク・ライフ・バランスの実現を

  • 「ワーク・ライフ・バランスがとれていないと思う」(インド・30代後半・女性)

  • 「男女差別があり、ワーク・ライフ・バランスも低く、遅れていると思う」(インドネシア・30代前半・男性)

■ 仕事最優先、家庭は二の次

  • 「年休は少ないし、母子家庭でも9時に帰らせるなんて酷いですよ。東京のある会社は、こうやっている」(トルコ・30代後半・男性)

  • 「残業をして当たり前、と思っている人がまだ多いところ。仕事より家族を優先すると、批判されるところ」(キルギス・30代前半・女性)

  • 「女性は子育てのために休業すると、復帰する際に条件がたくさんある。サポートする制度が整っていないからです」(ポーランド・40代前半・女性)

  • 「産休に対する偏見や優遇のないこと。"仕事終わったけど一人で先に帰りにくい"現象のこと」(イタリア・30代前半・男性)

■ 残業、長い会議など、無駄が多い

  • 「残業代で稼いでいる人達がまだ多い。世界各国は現在残業を減らす努力しているが、日本の大企業はまだまだ浸透されていないと感じる」(台湾・20代後半・男性)

  • 「有給休暇は取りにくいし、残業が多いから」(フランス・30代前半・女性)

  • 「例えば、週報や日報のことです。無駄なことが多いです。それを無くして欲しい。会議も無駄が多い」(エジブト・30代前半・男性)

  • 「長い会議、長時間労働」(ドイツ・40代後半・女性)

  • 「残業が多くて、プライベートとのバランスが無視されているからです」(ギリシャ・30代後半・男性)

■ 会社の制度についての指摘も……

  • 「終身雇用制度、男女差別などです」(ウクライナ・30代前半・男性)

  • 「休憩スペースが皆無。社内保育施設などもぜんぜん足りない。まだまだ残業文化が強い」(韓国・30代前半・女性)

  • 「管理部に女性が少ない。有能な女性も多いのに、使わないのはもったいない」(タイ・30代前半・女性)

  • 「私が働いている研究所では冬でも冷たい水しか出てこない。手を洗いたくないよ、この冷たさ。全国で一番重要な研究所ですよ!信じられません」(ロシア・30代前半・女性)

  • 「労働力が不足している」(ベトナム・30代前半・女性)

  • 「長時間労働や低賃金が話題になっていますし、正社員の数も減少しているからです」(モンゴル・40代前半・女性)

  • 「若手の社員が活躍できる場合が少ないですので、イノベーションがほぼゼロです。改善が強いと言っても、これはイノベーションに繋がるとは限りません」(アメリカ・20代後半・男性)

総評

今回は、日本の労働環境の「遅れている点」」について聞いた。今回、アンケートで、「ワーク・ライフ・バランスが実現できない」と指摘したのは、インドの30代女性と、インドネシアの30代男性。

ワーク・ライフ・バランスとは人生の段階に応じて、仕事で責任を果たしつつ、家庭でも充足した時間を過ごし、地域での活動にも積極的に取り組む、そのような生き方のことだ。現在、内閣府のホームページにも「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」として説明が載っており、国をあげて取り組む姿勢を見せている。

「母子家庭でも9時に帰らせるなんて酷い」とはトルコの30代男性。キルギスの30代女性は「仕事より家族を優先すると批判される」、ポーランドの40代女性は「女性は子育てのために休業すると、復帰する際に条件がたくさんある」と指摘した。イタリアの30代男性は、産休に対して偏見があり、かつ会社に優遇制度がないことを嘆いている。国内では出生率の低さが問題になっているが、子育てしながら仕事を続けられないことにも問題の一端を見る思い。国内企業は、多くの在日外国人から指摘があった子育て支援策について、もっと海外の事例に学ばなければいけないだろう。

このほか、日本人でもそう思うのが「無駄なことが多い」ということ。エジブトの30代男性、ドイツの40代女性が「長い会議が無駄」と指摘した。

愛社精神が強く、家庭より仕事を優先させることさえ厭わなかった"団塊の世代"だからこそ、日本の高度経済成長は成し遂げられたと言っても過言ではないだろう。

時は流れ、その子世代が40代前後になった。つまり現代社会を支える働き手は世代交代を果たした。しかし、国内企業の労働環境は世代交代しただろうか。複数回のアンケートを通じて、在日外国人の目から国内企業の内情を垣間見てきたが、まだ古き良き昭和のシステム、旧態依然な考え方を残す企業も少なくないように感じた。

グローバル化とは、国内企業の海外展開ばかりでなく、国内企業が外国人労働者を受け入れることでもある。したがって今後、多くの企業で"労働環境のグローバル化"が求められていくことは必至。その際、海外の企業と比較して「何が進んでおり」「何が遅れているか」の議論にもなるだろう。そこで耳を傾けたいのが、在日の外国人労働者たちの声。いまはまだ小さな声にすぎないが、やがてその議論に大きな役割を果たすことは想像に難くない。