ギットハブ・ジャパンは6月6日、日本初となるカンファレンス「Constellation Tokyo」を東京都港区の複合施設「TABLOID」にて開催した。ユーザー事例紹介やパネルディスカッション、開発者向けのテクニカルセッションなどが行われた。本稿では、GitHubのChief Business Officer(CBO)兼法務部門責任者であるJulio Avalos氏によるオープニングキーノートの様子についてお届けする。

米GitHub Chief Business Officer(CBO) Julio Avalos氏

GitHubは、2015年5月に日本法人を設立し、個人向けサービス「GitHub.com」と企業向けサービス「GitHub Enterprise」を軸に日本において事業を展開。さらに、今年3月には、GitHub.comの企業向け新プラン「GitHub Business」をリリースした。

ワークフローやエコシステムをオープンにしていくことが世界的な流れとなりつつあるなか、ビジネスにおいては、開発プロセスを単純化して連携させ、コミュニティを活用していくことが求められている。Avalos氏は、GitHub上のリポジトリの87%がパブリックだが、Pull Requestの8割近くはプライベートなものであるという現状から、オープンソースとプロプライエタリのソフトウェアの間にある垣根が曖昧になりつつあることを指摘。1万6000人以上のオープンソースコントリビュータを抱えるMicrosoftを例に挙げ、「21世紀に重要なのはこういった観点。ベストなタレントを雇い入れ、開発経費を下げ、開発効率を上げ、ソフトウェアやプロジェクトの最適化を行っていかなければならない」と語っている。

87%のリポジトリはパブリック。Pull Requestの79%はプライベート

Avalos氏によると、これは日本においても例外でないという。エンタープライズとオープンソース、個人開発者とコミュニティ、そしてチーム間での境界線が消えてきている事例として、ヤフーとKDDIを挙げた。ヤフーとは2012年からパートナーシップを組み、コミュニティイベントを開催するなど、分野を超えたさまざまな取り組みを展開している。一方、KDDIは、開発者がもともと個人のプロジェクトとして自宅で利用してきた環境や仕組みを社内で使えるという部分に、GitHub導入のメリットがあるとしている。GItHubを業務で利用できるということは、開発者のモチベーションにも繋がっているのだという。

日本において、GitHubは現在、1日あたり18万人のアクティブユーザーを抱える。グローバルでみるとEnterpriseの顧客の10%を占めており、過去1年間で売り上げは約3倍。こういった状況についてAvalos氏は、「ソフトウェア開発の視点だけではなく、ワークフローとしてのコラボレーションが日本でも普及しているということの表れだと感じている。クラウドソーシングでアイディアを共有できる仕組みができあがってきているということだ」と分析する。このためGitHubは、日本を注力マーケットの1つとして位置づけている。

エンタープライズの顧客の10%は日本。過去1年間で売り上げは約3倍となった

そしてAvalos氏は、コードの行や課題ごとにコメント可能な「Code Review」、プロジェクト管理ツールの「Projects」、リポジトリにトピック(タグ)をつけることができる「Topics」など、ここ最近ローンチされたGitHubの機能についてそれぞれ解説し、これらをサポートしているクエリ言語のGraphQLについても「企業としてのGitHub、あるいは開発者の集合体としてのGitHubのやり方が反映されているものだ」と触れた。

さらにAvalos氏は、5月にリリースされたばかりの「GitHub Marketplace」についても紹介した。GitHub Marketplaceは、各種開発ツールを提供するオンラインストアで、ツールは「Code quality」「Code review」「Continuous integration」「Monitoring」「Project management」の5つのカテゴリに分類されている。

これまでにも開発ツールの提供は行っていたが、開発元ごとにアカウントを取得するなどの手間がかかっていた。Marketplaceで提供されるツールはすべてGitHubのアカウントで入手できるため、必要なツールを簡単に利用することが可能となる。「CircleCI」「Zube」「Waffle」などがすでに提供開始されているが、今後もツールを増やし、サービスとしてさらに拡大していきたいとしている。

各種開発ツールを提供するオンラインストア「GitHub Marketplace」を5月にリリース

Marketplaceを例に挙げ、Avalos氏は講演の最後に「サービスを拡大しながら、各開発者のニーズを満たすだけでなく、ビジネスやインテグレーターのニーズも満たしていこうと考えている」とGitHubの今後の展望について語っている。今後は、開発者以外のユーザーを参画させていくことで、コラボレーションをさらに促すような仕組みを展開していきたい考えだ。