テクトロ、従来の基準を一新するミッドレンジ・オシロ「5シリーズ」を発表

テクトロニクス社は6月6日、"従来の基準を一新する技術革新"と銘打ったミッドレンジ・オシロスコープ「5シリーズ MSO(ミクスド・シグナル・オシロスコープ)」を発表した。

5シリーズの8チャネル品「MSO58」と、2017年4月1日よりテクトロニクス社の代表取締役を務めるKent Chon(ケント・チョン)氏

近年、プロセスの微細化や低消費電力技術の採用により、半導体デバイスの動作電圧が低下、ジッタノイズの抑制がより重要な課題となってきている。また、従来は、RF分野はRFのエンジニアが、電源は電源のエンジニアが、といった餅は餅屋的な各分野のエンジニアによる計測で済んでいたものが、システムにおける機能の複合化が進む現在、そうしたエンジニアは垣根を越えて、総合的な計測を行うことが求められるようになってきている。

しかし、主にそうした計測で用いられる側の存在であるオシロスコープは、4チャネルアナログ入力が主流であり、入力チャネル数が不足する事態が生じつつあるほか、タイミングマージンの減少により、デジタル波形とアナログ波形の高度な統合の必要性、小さいSNRへ対応するための高垂直分解能、高速動作周波数・高速伝送に対応する高いジッタ解析機能などが求められるようになってきていた。

創業以来、最大の投資で開発されたオシロスコープ

5シリーズは、そうしたこれからの計測ニーズに対応することを目的に開発されたオシロスコープで、同社曰く「創業以来、最大の投資をして開発を行った」とする自信作となっている。

そんな5シリーズには、オシロスコープとして、5つの世界初の機能が搭載された。1つ目は、アナログ入力、デジタル入力を自由に構成できるオシロスコープ入力技術「FlexChannel」の採用。従来のVPI接続により既存プローブにも対応するほか、追加コネクタにより、新たなデジタルプローブにも対応する同技術は、コネクタに対応したプローブをアナログ、デジタル問わずに差し込むだけで、アナログチャネル/デジタルチャネルを任意に組み合わせた状態で使用することを可能とする。

FlexChannel技術の概要。対応製品であればアナログプローブ、デジタルプローブを気にせずに利用することが可能

2つ目は4チャネルのほか、6チャネルならびに8チャネル品を選択可能とした点。これにより、4チャネルオシロを2台同期させて8チャネル構成を構築する、という必要がなくなるほか、デジタルプローブは1コネクタあたり8チャネル構成であるため、最大64チャネルの計測を可能とする。

4チャネル品「MSO54」のほか、6チャネル品「MSO56」、8チャネル品「MSO58」をラインアップ

3つ目は、外見上の最大の特徴とも言える15.6型フルHD対応の静電容量方式タッチスクリーンの採用。4つ目は、その上で操作するユーザインタフェース(UI)の最適化。この2つの組み合わせにより、ユーザーはタッチスクリーン上のみで、すべての操作を完了することが可能となるほか、ピンチイン/ピンチアウトやトリガーなどもタッチ操作で可能としている。また、Webブラウザ経由で別のPCなどから操作をすることも可能。これにより、オシロスコープは計測対象物とともに実験室の中に、操作は実験室の外から、といった操作も容易に行うことが可能となっている。

オシロスコープのスクリーンとしては最大級の15.6型フルHDを採用。Webブラウザ経由で、別途PCやAndroid/iOS端末から操作することも可能

本体にダイヤルやボタンがあるにはあるが、基本的には、このUI上のみで、すべての操作が可能

そして5つ目は、組み込みLinuxベースの専用OSか、Windows環境かを選択することが可能な点(Windowsはオプション扱い)。計測ソフトウェア自体は、バックエンドで動作するため、どちらのOSを選択しても、計測制度に変わりはなく、これまでOSの違いによって採用を見送っていた、といった垣根を取り払って、真に5シリーズを必要とする計測ニーズがあるユーザーが気軽に利用できるようにした。

2種類のOSから選択可能であるが、UIや操作方法そのものは同じで、かつ計測制度も同じである

各種コンポーネントを1チップ化することで高精度を実現

5シリーズの基本性能は、周波数帯域が350MHz/500MHz/1GHz/2GHz、アナログチャネル数が最大8、デジタルチャネル数が最大64、サンプルレートは各チャネルあたり6.25GSps、標準レコード長は各チャネルあたり62.5M、最大レコード長は各チャネルあたり125M(オプション)、波形取り込みレートは50万波形/秒、A/Dコンバータ(ADC)の分解能は12ビット、垂直分解能は6.25GSps時で8ビット、3.125GSps時で12ビット、ハイレゾモードを利用した場合、最大16ビットとなる。

5シリーズの概要と12ビットADCの概要

この高精度化を実現した最大のポイントは、ADC、Demux、トリガ、アクイジション部品を1チップ化したこと。このほか、低ノイズのフロントエンドアンプの採用や、ハードウェア/ソフトウェアアーキテクチャそのものの刷新も行うことで、実現したという。

1チップ化のイメージ。基板の構成は基本的に同じであり、1GHzまでのアップグレードはライセンスによるフィールドでの対応(有償)が可能(2GHzに関しては、アンプを交換する必要があるので、サービスセンターでの預かりアップグレード。有償)

また、パッケージデザインもタッチUIに適するものへと大幅な変更が加えられたほか、チャネル数の増加に伴う作業の混乱を防ぐために、ボタンなどが担当するチャネルがアクティブ時には、それぞれ異なる色で表示されるなどの工夫が施されている(色はタッチスクリーン上のチャネルの波形の色と同じ)。

プローブが接続されているボタンはランプが点灯する

さらに、オプションとして、代表的な複数のシリアル規格に対応するトリガ/デコードパッケージも用意したほか、ジッタ解析の標準ツール「DPOJET」を内蔵しており、通常メニューから、基本測定同様、簡単にジッタ測定を実施することが可能となっている。

MSO58の外観。背面のインタフェースはシンプルなものに仕上がっている

なお、同社としては、5シリーズについて、従来のMSO5000シリーズを活用しているユーザー層をメインターゲットに、MSO5000シリーズ+αの測定価値を提供するシリーズという位置づけとして、製品提供を行っていくとしている。価格は158万円(税別)から、となっている。

5シリーズの標準価格。このほか、Windows OSを搭載したSSDなどもオプションとして提供される

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