物流業界は、かつてない危機を迎えている。急速に伸びる需要に対し、人手が確実に足りていない。働き手の高齢化も問題となっている。そんな物流を救おうと、さまざまな企業が対策を練っているようだ。対策の多くは、人の仕事を機械に代替させ、省人化を図ろうというもの。近いところでは5月、ソフトバンクがヤマト運輸と、無人運転を利用した幹線輸送の実証実験を行うと発表していた。

そんな中、5月31日にNTTデータがAIを活用した「物流業務変革コンサルティングサービス」の提供を開始すると発表。人手に依存している業務の自動化・最適化に向け、AI技術をはじめとしたデジタル技術を適用することで、現場業務の変革を支援するものだ。

同社は本サービスに先立ち、最先端のディープラーニング技術を活用した「物流画像判別AIエンジン」を開発した。

物流画像判別AIエンジンの応用例

開発に至った経緯は「兼ねてより付き合いのあった企業からの要望」であったとNTTデータ担当者。鈴与、佐川急便などと実証実験を行い、多様な荷物の判別や自動仕分けに対する有用性を検証してきた。

また、NTTデータは2017年1月、経産省の「IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業」に採択された。先のAIエンジンによりシミュレーションを実施することで、人手で行っている業務を65%省人化でき、荷物と車両のマッチングが3.6%向上できるとの試算を得たという。

実証実験に協力した佐川急便は、「確実に訪れる労働力不足に対応するための施策の1つとして、この開発に協力することで、庫内作業の省人化実現を目指す」と話す。

NTTデータとしては、「物流業務変革コンサルティングサービス」や「物流画像判別AIエンジン」等を含むシステムの提供、パートナー企業との新事業の企画を通し、2020年末までに累計100億円の売り上げ達成を見込んでいるそうだ。

今後の進退が注目される物流業界。今回のサービスは、起死回生の一手となるだろうか。NTTデータによると、「新サービスを発表して間もなく、複数の企業から問い合わせの連絡が届いた」という。さらに、「現在荷物の自動判別には人の介在が不可欠だが、いずれ完全無人化も見込める」と、期待値も高い。

情報技術の進化は、人々の生活を豊かにしてきた。AI技術が進歩しているなか、その傾向は顕著だ。物流業界の課題が解決する日は、そう遠くはないかもしれない。