東北大学、大阪大学、日本電気(NEC)、国際航業、エイツーは共同で、地震発生直後に津波シミュレーションを行い、30分以内で被害推計を行う「津波浸水・被害推計システム」を開発し、同システムが内閣府が運用する「総合防災情報システム」の一機能として採用されることになったと発表した。

津波災害発生時における対応は、人・建物の被害分布の把握や交通網を含むライフライン等の被害状況を早期に把握する必要である。この事業は、2011年東北地方太平洋沖地震津波災害の教訓から、迅速な災害救援計画・体制の確立をめざした取り組みの一つに位置づけられている。複数の大学や民間事業者が連携して、地震発生時の断層推定から津波による浸水 ・被害推計、情報提供までを迅速に行う世界最先端の防災システムを開発・構築・運用し、日本の災害対応力強化に貢献しているという。

このシステムは、地震発生直後に津波シミュレーションを行い、被害推計を行うもの。南海トラフ域で発生する地震を想定し、地震発生直後に総距離6,000Kmにおよぶ太平洋沿岸地域における津波被害の推計を、地震発生から約30分以内で行えるということだ。

また、システムの耐障害性向上のため、東北大学(仙台)と大阪大学(大阪)の2拠点でNECのスーパーコンピュータ「SX-ACE」を使用した同一システムを構築・運用し、24時間365日の無停止稼働を実現するという。

これにより、大規模地震発生時の津波による広域的な被害を迅速に推定することが可能となり、災害時における政府の迅速な対応に貢献するとしている。

なお、各分担・役割に関しては、「津波発生予測」が東北大学大学院理学研究科 日野亮太教授、太田雄策准教授、エイツーが担当する。地震によって沖合で励起された津波の高さ分布(津波波源モデル)を、津波浸水 ・被害推計シミュレーションの初期条件として提供するために必要となる震源断層モデルの即時推定(地震発生後10 分以内)を行うという。

また、「津波伝播・浸水予測モデル、被害推計モデル」については、東北大学 災害科学国際研究所 越村俊一教授と国際航業が担う。静岡県から鹿児島県まで約6,000Km にわたるの太平洋沿岸域に対し、高精度な津波被害推計を可能とするモデル開発を行うほか、より精緻な被害推計を行うため、地形モデルおよび被害推計システムの開発を行うとしている。

そして「モデル高速化・並列化、システム開発・実装」は、東北大学 サイバーサイエンスセンター小林広明センター長特別補佐・教授、大阪大学 サイバーメディアセンター 下條真司センター長・教授、およびNECが担当する。NEC「SX-ACE」を利用した「津波浸水 ・被害推計シミュレーションプログラム」の高速化と大規模並列化を共同で行い、通常時は全国共同利用計算機として運用しているスーパーコンピュータを、津波発生時には津波シミュレーション専用運用に迅速に切り替え、シミュレーションを実行するとしている。