日立マクセル(以下マクセル)は25日、電池断面のリアルタイム観察技術を用いて、これまで不可能と考えられていた充放電中の電解液系リチウムイオン電池内部における正極および負極内のリチウム濃度分布を、同一視野内で、リアルタイムに計測することに、世界で初めて成功した。

リチウム濃度分布評価。 1C容量 = 1時間で放電し切る容量 SOC = 充電率

この技術により、リチウムイオン電池に必要な基本性能である寿命特性・出力特性などの改善が期待される。また、発熱・着火の直接的な原因となるリチウムデンドライトの発生確率を大幅に低減することで、大電流下で使用する際の安全性を飛躍的に向上させるための指針が得られるという。

充放電中のリチウム濃度の偏在は、内部の抵抗増加やリチウムデンドライトの析出などにつながり、充放電特性や安全性を低下させる要因となる。そのため電池動作下での濃度分布を正確に捉える必要があるが、正負極リチウム濃度分布の同時測定は材料種の違いにより技術的に難しく、ほとんど行われていなかった。さらに、従来の測定法では一つの計測に時間を要していたため、リチウムデンドライト発生確率の高い大電流下で、正負極の深さ方向リチウム濃度分布を同時にリアルタイム測定することは困難だった。

マクセルでは2011年より、リチウムイオン電池の「見える化」技術の研究に取り組み、2013年、世界に先駆けてリチウムイオン電池開発へ適用した。そして今回の観察技術の開発により、新しい視点からの特性向上及び安全性向上へ向けた検討が可能となり、リチウムデンドライトの発生確率を大幅に低減することが可能となった。

同社は、本技術はすべてのリチウムイオン電池に対する安全性向上に貢献すると述べる。特に大電流での使用が想定されるHEV、EVなど車載用のリチウムイオン電池開発分野に適用することで、より安全な長距離走行の実現が期待できるそうだ。さらに、リチウムデンドライト析出が大幅に抑制されたリチウムイオン電池は、車載用としての寿命を迎えた後も蓄電用途などへの効率的で安全なリユースが可能となるという。