富士通と大同大学は共同で、溶けた金属を流し込む際に発生する波立ちを忠実に再現できる新しいシミュレーション技術を開発した。これにより、品質の高い製品をより短時間に製造できるようになると期待される。開発したシミュレーションについては、2018年度の実用化を目指すという。

ダイカストスリーブへの注湯実験との比較によるシミュレーション技術の検証

鋳造では、装置や型の中の見えない部分での金属の流れ方が成型後の品質に大きく影響する。しかし、高音で溶かした金属の流れ方は、空気と接する表面に形成される酸化膜によって大きく変化するため、正確にシミュレーションすることが困難だった。

今回、富士通と大同大学は、計算量を大きく増やさず、薄い酸化膜による溶けた金属の流動性の低下の影響を計算できるシミュレーション技術を開発した。この技術は、流体を粒子の集まりとして表現して計算する粒子法という手法に、液面に位置する粒子の物性値を動的に変化させる新たな計算モデルを加えたもの。この計算モデルでは、液状の金属を表現する粒子のサイズと膜の厚さとの比率に応じて、液面に位置する粒子の流動性に関わる物性値を設定する。

本技術を、鋳造装置への注ぎ込みを模した実験との比較により検証したところ、高温で溶かしたアルミニウムを注ぎ込む際に発生する波立ちが、液面の酸化膜に沿って収まっていく様子を、忠実にシミュレーションできることが確認できた。

本技術の詳細は、5月26日から29日に東京都市大学世田谷キャンパスで行われる「日本鋳造工学会第169回全国公演大会」にて発表するという。