京都大学は、国際無線通信規格Wi-SUN FANを搭載したIoT用ゲートウェイの開発に成功したと発表した。

開発されたIoT用ゲートウェイ(左)及び搭載したWi-SUN FANモジュール(右)

Wi-SUN FANは、Wi-SUNアライアンスが制定するスマートメータリング、配電自動化を実現するスマートグリッド及び、インフラ管理、高度道路交通システム、スマート照明に代表されるスマートシティを無線で実現するためのセンサー、メーターに搭載するIPv6で多段中継(マルチホップ)可能な通信仕様。今回開発されたIoT用ゲートウェイは、京都大学情報学研究科の原田博司教授らの研究グループと、ローム、NextDrive、日新システムズとの共同開発で作成された。

NextDriveが開発し、商用化してきた従来のIoT用ゲートウェイは、Webカメラ、温湿度センサー等との組み合わせで、ホームセキュリティ、介護、環境計測等のために必要となる情報を収集し、携帯電話系、Wi-Fiによりクラウドに伝送することが可能だった。しかし、IoT用ゲートウェイ同士は親機と子機の関係があれば通信できるが、子機から別の子機に多段中継伝送するマルチホップ機能が搭載されていなかった。

一方、京都大学、ローム、日新システムズは、IP通信によるマルチホップ機能を搭載し、長距離伝送性、耐干渉性に優れたWi-SUN FAN無線通信モジュールの研究開発を行ってきた。このWi-SUN FANは、IEEE 802.15.4g無線通信規格による無線機器間での最大1km程度の伝送距離、10段以上のマルチホップ機能による多段中継機能を実現し、さらにセキュリティ等をWi-Fiと同等にすることにより、Wi-Fiと同等の使いやすさを実現できる機能があったものの、IoT用の実システムへの応用はまだ充分行われていなかったという。

想定した利用例

今回開発されたIoT用ゲートウェイは、NextDriveが開発した小型IoT用ゲートウェイ「Cube J」に、京都大学、ローム、日新システムズが開発してきたローム製無線モジュールを用いたWi-SUN FAN無線通信モジュールを搭載したもの。サイズ47×47×38mmの筐体にWi-SUN FAN無線通信モジュールを搭載することで、自身が収集したデータを別のIoT用ゲートウェイに多段中継伝送することが可能になり、宅内での面的なカバー率が向上する。この中継段数は10段以上も可能であり、大規模施設においても同ゲートウェイを利用できるという。また、Wi-SUN FANはWi-Fiと異なる周波数を用いているため、Wi-Fiとの干渉もなく、堅牢性の高いIoTネットワーク構築が可能となるほか、Bluetooth Low Energy(BLE)搭載のセンサーデバイスをWi-SUN FANに変換し、伝送することも可能だということだ。

今後は、今回開発されたWi-SUN FAN搭載のIoTゲートウェイを商用化するために、Wi-SUNアライアンスと共同で開発を行っていく予定で、今回の成果は、5月24日より東京ビッグサイトで開催される「Wireless JAPAN 2017」のWi-SUNアライアンスブースおよび、5月30日より台湾、台北で開催される「COMPUTEX 2017」にてデモ展示されるということだ。