東北大学は、同大学大学院理学研究科の上田実教授、理化学研究所袖岡有機合成化学研究室/環境資源科学研究センターの袖岡幹子主任研究員/グループディレクター、名古屋工業大学材料科学フロンティア研究院 築地真也教授らの研究グループが、病原因子の気孔再開口作用に、これまで知られていた機構以外にも小胞体の関与するバイパス機構が関与することを発見したことを発表した。この研究成果は5月4日、米国の科学ジャーナル「ACS Central Science」に掲載された。

コロナチンは植物の気孔孔辺細胞に作用する(出所:東北大学ニュースリリース※PDF)

植物病原菌「シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)」は、葉表面に付着し、開口した気孔から植物体内に侵入して感染する。これに対して植物は気孔を閉鎖し感染を防護する(気孔防御)。これに対抗し病原菌は、感染因子コロナチンを分泌して気孔を再開口させ、体内に侵入するという。

コロナチンは植物の虫害に対する抵抗性をコントロールするCOI1-JAZ機構をハイジャックして作用するため、COI1-JAZ機構を抑えて病原菌感染に対する抵抗性を高めると、虫害に対する抵抗性が低下するというジレンマがあった。

このたび、研究グループは、独自開発した感染因子コロナチン立体異性体の示す生物活性の詳細な解析と、アルキンタグ生細胞ラマンイメージング技術(ATRI) によるコロナチンのシロイヌナズナ気孔孔辺細胞中での局在性解析により、その気孔再開口作用が小胞体の関与する新規機構(ER機構)に基づくことを明らかにした。植物細胞の生細胞ラマンイメージングは、シロイヌナズナの葉緑体形成不全変異体arc-6を用いることで初めて実現できた新しい技術だという。

病原菌感染と害虫に対する植物の抵抗性はコインの裏表のような関係にあり、同時に強化することはできないとされていたが、それを復す発見だということだ。この新規機構に基づいて、植物の病原菌感染を防ぐ画期的な薬剤の開発が期待されると説明している。

植物病原菌はコロナチンによって気孔を再開口させ、感染する(出所:東北大学ニュースリリース※PDF)