生体内で働く分子ロボ実現に一歩-人工細胞内でDNAをコンピュータとして利用

東京工業大学と東京農工大学は、DNA分子を用いて計算を行うDNAコンピューティングの計算結果である出力分子をナノポアと呼ばれるチャネル型の膜タンパク質により、電気情報として検出することに成功したと発表した。

人工細胞膜中に再構成したナノポアタンパク質によりDNA演算分子を検出する。入力のDNA分子を変換しRNA分子として出力、その後ナノポアを通過するRNA分子の情報を電気的に取り出した。(出所:東京工業大学プレスリリース)

DNA演算、ナノポア計測を行ったマイクロデバイス。デバイス中に人工細胞膜モデルとなるドロップレットを作製し、その中でDNA演算、ナノポア計測を同時に行うことに成功した。(出所:東京工業大学プレスリリース)

同研究は、東京農工大学工学研究院生命機能科学部門の川野竜司テニュアトラック特任准教授、東京農工大学大学院生(当時)の大原正行、東京工業大学情報理工学院情報工学系の瀧ノ上正浩准教授らの研究グループによるもので、同研究成果は、4月17日付けの「ACS Synthetic Biology」(電子版)に掲載された。

日常使用しているコンピュータや、それらを組み込んだ工学ロボットは、電子を情報媒体として2進数の計算情報処理を行っているが、プログラム可能な人工分子システム「分子ロボット」は分子(DNA/RNA)を情報媒体として進数やより高度な演算により情報処理を行うことを目指している。DNAコンピューティングは、DNA配列を利用した情報処理・計算技術であり、次世代の並列計算技術を目的として研究されてきた技術で、最近では、DNAが元々生体で使われていることに着目し、生体親和性が高い材料として、in vivoで診断・治療などの医療応用や、分子ロボットと呼ばれる分子を使って創るロボットの情報処理を行うシステムとして期待されている。

今回、同研究グループは、配列の異なる2種類のDNAを入力分子とし、RNA合成酵素による分子変換(DNAの情報に基づきRNAを合成する)を組み合わせ、2種類の入力DNAが入力された場合のみRNAが出力分子としてアウトプットされるという情報処理を行う「ANDゲート」を人工細胞モデルであるマイクロドロップレット中に作製した。出力されたRNA分子は、ドロップレット表面の人工細胞膜部分に設置したナノポアを通過する際に電流を生じるため、電気情報として計測することに成功したという。同システムは、MEMS(MicroElectroMechanicalSystem)技術(半導体微細加工技術)を利用したマイクロデバイスに組み込むことで、ANDゲートに必要な4種類の演算を同時に行い、出力を得ることに成功したということだ。

同研究によって、DNAコンピューティングの出力分子を分子レベルで検出し、分子の情報を電気情報として取り出すことができた。これにより、従来用いられていた方法よりも短時間で出力分子を情報として取り出すことが可能になった。さらに、分子の情報を電気情報に変換可能なことから、分子ロボットとエレクトロニクスデバイスの融合に繋がる結果になったという。今後は、分子ロボットの情報処理システム構築の重要なツールとして、高度な機能を有す分子ロボットを構築することにより、DNAコンピューティングを利用した体内で病気を診断・治療できるシステムへの応用が期待されるということだ。



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