ケンブリッジ大学などの研究チームは、ハチノスツヅリガの幼虫が、レジ袋の材料としても使われるポリエチレンを食べることを確認したと報告した。ポリエチレンは難分解性のプラスチックであり、プラスチックごみによる環境破壊の原因として問題になっている。今回の発見は、プラスチックの生物分解処理技術につながる可能性がある。研究論文は、生物学誌「Current Biology」に掲載された。

ハチノスツヅリガの幼虫がレジ袋に開けた穴 (出所:ケンブリッジ大学)

ハチノスツヅリガ(Galleria mellonella)の幼虫は、釣り餌として養殖されている「ブドウムシ」に近い種類の虫で、ハチの巣に寄生し、蜜ろうを食べて成長する。研究チームは、このハチノスツヅリガの幼虫をレジ袋に入れておくと、40分から1時間程度で袋に大きな穴が開くことを確認した。

ハチノスツヅリガの幼虫がふだん食べている蜜ろうは、ポリエチレンと同様に炭素原子が長い鎖状につながった高分子であるため、蜜ろうの消化機構がポリエチレンにも作用していると考えられるという。

実験では、ハチノスツヅリガの幼虫をポリエチレン上に1時間放置したところ、幼虫1匹あたり平均2.2個の穴を開けることがわかった。幼虫100匹を使った実験では、1晩でレジ袋92ミリグラムを分解することができた。この分解速度は、これまでに報告されているプラスチックの生物分解と比べて桁違いに速い。例えば、昨年報告があったバクテリアによるプラスチック分解の速度は、1日に0.13mgだった。

幼虫をすりつぶした液をポリエチレンに塗布した場合にも、やはり穴が開くことが確認された。これは、幼虫がレジ袋をあごで噛み砕いているだけでなく、なんらかの酵素によってポリエチレンが分解されていることを意味している。研究チームは、ポリエチレンが酵素の作用によってエチレングリコールに分解されていると分析。今後は、ポリエチレン分解酵素の特定を進めたいとしている。

通常、ポリエチレンが環境中で分解されるのには、100~400年かかるとされる。今回の発見は、ポリエチレンの新しい分解処理技術につながるのではと期待されている。