阪大など、CNTの構造を利用して近藤状態の種類と量子ゆらぎの関係を解明

大阪大学(阪大)などは4月28日、人工原子を用いて、カーボンナノチューブの構造を利用した異なる2種類の近藤状態を作りだし、電流雑音測定によって近藤状態の種類と量子ゆらぎの関係を解明したと発表した。

同成果は、大阪大学大学院理学研究科 小林研介教授、同理学研究科 Meydi Ferrier特任研究員(研究当時、現・パリ南大学講師)、荒川智紀助教、大学院生の秦徳郎氏、藤原亮氏、大阪市立大学大学院理学研究科 小栗章教授、東京大学物性研究所 阪野塁助教らの研究グループによるもので、5月8日付の米国科学誌「Physical Review Letters」オンライン版に掲載される予定。

近藤効果とは、固体中にある磁性不純物のスピンが、その周りの電子のスピンと結合した新しい状態(近藤状態)を作ることによって生じる、量子多体現象のひとつ。通常の近藤効果は、電子の持つスピンの自由度の量子ゆらぎによって生じるが、電子が運動方向などの自由度も持っている場合、異なる量子ゆらぎが発生し、種類の異なる近藤効果が生じる。自由度がスピンだけの場合は「SU(2)近藤効果」、自由度が多くなると「SU(4)近藤効果」などが実現する。

このような多彩な近藤効果は、微細加工技術によって作製される「人工原子」と呼ばれる微小な電子回路において、自由度の数を制御することで定量的な理解が可能となる。一方、近藤効果による量子ゆらぎは、電流雑音に非常に小さな信号として現れることが知られており、その検出には極めて高い水準の電流雑音測定技術の開発が必要であった。

今回、同研究グループは、カーボンナノチューブを用いて人工原子を作製し、人工原子を通過する電流を測定することによって、その状態を精密に調査した。人工原子内の電子は、スピン自由度のほか、チューブを取り囲む運動方向の自由度を持っている。同研究グループは、人工原子を制御することによって理想的なSU(4)近藤状態を実現。さらに、磁場を加えていくとスピンと磁場の相互作用によって自由度の数が4から2へと変化し、SU(2)近藤状態に移り変わっていくことを発見した。

(a)カーボンナノチューブ人工原子の概念図。人工原子内にある電子の個数は、ゲート電極によって、1個単位で制御できる。電子はスピン自由度(青矢印)と運動の自由度(チューブを取り囲む赤い矢印)を持つ (b)近藤状態の概念図。青い部分が電極、黄色い部分が人工原子。磁場を印加していくとSU(4)近藤効果から SU(2)近藤効果に連続的に移り変っていく (出所:大阪大学Webサイト)

さらに同研究グループは、電流だけではなく、電流に含まれる電流雑音を電流雑音測定技術で調べ、SU(4)近藤状態とSU(2)近藤状態のそれぞれについて有効電荷を高精度で検出。近藤状態の種類が変化するにつれて、有効電荷と量子ゆらぎが連続的に変化することを実証した。

今回の成果について同研究グループは、量子多体現象のより深い理解と量子ゆらぎの制御につながるものであり、物質の新機能開拓など、今後の物質科学の発展に貢献していくものと説明している。



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