ANAグループは4月28日、2017年度以降の4年間の施策として「ローリング版2017」を発表。連結化によりANAグループの一員となったPeach Aviationを含むLCC事業とANAによるマルチブランド戦略を加速させ、2020年以降の成長ステージに向けた備えを強化する。

「ローリング版2017」の位置づけ

ANAグループは2016年1月に2020年度を視野に入れた5年間の成長戦略として「2016~2020年度ANAグループ中期経営戦略」を策定。「ローリング版2017」はその後の環境変化や各事業の状況を踏まえたものとなる。引き続き、「エアライン事業領域の拡大」と「新規事業の創造と既存事業の成長加速」を戦略の柱に、グローバルな事業環境の変化に対応できる強靭な体質の企業グループを目指す。

FSC(フルサービスキャリア)事業における国内線の収益性を維持した上で、その他の各事業を拡大させ、ANAグループにおける最適な事業ポートフォリオを構築。特に、連結化したPeach Aviationの強みを活かし、LCC事業をさらに成長させる。また、2016年度に発生した事象も踏まえ、経営の基盤である安全のさらなる堅持に取り組む等、基本品質に徹底的にこだわると共に、競争力の源泉となる人財への投資も積極的に行っていくとしている。

各事業の売上規模(バブルの大きさは売上規模イメージ)

国内外問わずあらゆる顧客層に、ANA、Vanilla Air、Peach Aviation、各ブランドの訴求力を高め、FSC事業における国際線、LCC事業を大きく拡大させることで安定した収益基盤を築くと共に、訪日需要の拡大や新たな需要の創造を通じて地方創生に貢献を目指す。また、業務提携や資本提携、中距離LCCマーケットへの進出等あらゆる選択肢により、アジア市場での新たな成長領域を開拓していく。なお、ANAグループの総機材数はLCC事業を含め、2016年度末の268機から2020年度にはPeach Aviationを含めて約335機となる予定。

事業の柱であるANAのFSC事業は、2020年の首都圏空港発着枠拡大に向けた備えを強化して。具体的には、安全・品質の総点検を行い、「ダントツの品質」を追求すると共に、採用競争力の向上、従業員が意欲をもって働くことができる環境整備や総合トレーニングセンターの新設等、安全・品質・サービスの源泉となる人財への投資を積極的に進めていく。

国際線旅客事業においては、これまでの首都圏デュアルハブ戦略を継続し、羽田深夜早朝枠の活用も含め、羽田空港及び成田空港から利便性の高いダイヤを提供すると共に、2020年に向けてA320neo、B777-9X、B787-10等の最新鋭機を順次導入していく。リゾート・プレジャーマーケットの強化にむけて、ビジネスクラス・フルフラット搭載のB787-9機材を需要が旺盛なホノルル路線に投入し、新しいプロダクト・サービスを展開する等、2019年のA380導入に向けた準備を加速する。また、ANAセールスと連携した新たなリゾート需要の掘り起しやアジア後背地需要の取り込み等を行っていく。2017年は生産量64,778百万座キロとし、2020年は約130%を目指す。

国内線旅客事業においては、2017年度にA321neo機材を4機導入し、高需要期における大型機材稼働の最大化と低需要期における小型機稼働の最大化を両立させる「ピタッとフリート」モデルを推進し、さらなる収益性の維持・向上を図る。プレミアムクラスのサービス向上や全ての乗客にストレスフリーな搭乗モデルを通じて快適性を追求していくと共に、LCC事業と連携し、将来の顧客化を見据えたミレニアル世代(若年層)需要の開拓や訪日需要の取り込みを行っていく。2017年は生産量58,455百万座キロとし、2020年は約98%を目指す。

貨物事業においては、回復基調の貨物需要動向を見定めながら、2017年度はフレイターネットワークの再編でさらなる需給適合(生産量対前年比▲10%)を進めると共に、産業別マーケティング、海外販売体制強化、システム化の推進によりフレイター事業の黒字化を達成する。国際輸送サービスを担うOCSについては、ANA Cargoとの協業を深化させ、越境ECビジネス等、アジアを面で捉えた物流サービスを展開。また、2017年10月に東京辰巳にロジスティクセンターを開設し、効率的な物流サービスの提供を行っていく。2017年は生産量6,824百万トンキロとし、2020年は約120%を目指す(旅客便+フレイター)。

LCC事業のイメージ

LCC事業において、世界的にはLCCマーケットにおける競争は激化しつつあるものの、北東アジアにおいてはマーケットのさらなる成長・拡大が期待できると考察。Vanilla AirとPeach Aviationは共に独自性を保ち、LCCの特徴であるFSCとは一線を画した価格設定や創意工夫したサービス展開等を通じて、国内外の潜在需要を掘りおこし、収益を伴う着実な成長を図る。

Vanilla Airは2017年中に小型機材を3機追加(合計15機)し、成田発着の国内線の増強を図りつつ、レベニューマネジメントを強化し収益性を向上させる。一方のPeach Aviationは、安定した収益基盤をベースに、2017年度は小型機材を2機追加(合計20機)し、仙台・新千歳など新規拠点の展開を推進。非航空系事業にも注力し、地方創生に貢献する。

新規事業の創造は、引き続き、「ANAグループの有形無形資産の最大活用」「他社ノウハウの活用」「ICTなどの新技術の活用」を推進し、将来のグループの収益貢献につなげる。具体的には、訪日外国人の拡大に伴うビジネスチャンスに対して継続的に取り組むと共に、2016年度に設立したANA Xを中心に、ANAグループが有する顧客基盤を軸に、"日常"にフォーカスし、消費行動・ライフステージに応じた事業を展開していくことにより、顧客のLife Time Valueの最大化を目指す。一方、既存事業における選択と集中、外注化も進めていく。

エアライン事業領域の拡大とコストマネジメントによる過去最高益の更新を目指す(※は2016年1月29日発表時点の目標を据え置き)

2017年度は、2020年度の価値創造目標の達成及び2020年度以降の成長ステージにおける飛躍に向けた投資を行いながら、FSC国際線、LCC、貨物事業を軸とした増収と徹底したコストマネジメントの推進により過去最高益の更新を目指す。なお、2017年度は1株あたり6円の配当を継続するが、今後についてはさらなる増配や自社株買いについて検討し、株主還元の充実を図っていく。