近畿大学(近大)は4月25日、円偏光を発するCPL発光体を開発したと発表した。

同成果は、近畿大学理工学部応用化学科 今井喜胤准教授らの研究グループによるもので、3月14日付の英国科学誌「Dalton Transactions」に掲載された。

CPL(円偏光発光)は、さまざまな利用法が検討されているが、CPLを生み出す高輝度・高円偏光度を備えた有機CPL発光体は開発途上段階であり、円偏光を発する新しい手法についても試行錯誤が続いている状況だという。

今回、同研究グループは、発光性ユーロピウム(Eu)錯体 Eu(III)(hfa)3(H2O)2に、光学活性な配位子として面不斉を備えたジフェニルホスフィン配位子 Phanephosを配位させることにより、新しいユーロピウムCPL発光体の開発に成功。Euのf-f遷移に由来する赤色の円偏光発光を確認した。

なお、同Eu錯体とPhanephosは、クロロホルム溶液中またはアセトン溶液中で混合されたが、同じR体のパラシクロファン骨格を用いているにもかかわらず、589nm付近の円偏光発光は、クロロホルム溶液中では左回転、アセトン溶液中では右回転となり、溶液の種類を変えるだけで、光の回転方向を制御できることも明らかになった。

同研究グループは今後、Eu以外のランタノイド金属、Phanephos以外の面不斉を備えたジフェニルホスフィン配位子を用い、新しい面不斉を導入したランタノイドCPL発光体の開発を進めていくとしている。

Phanephosおよび発光性ユーロピウム(Eu)錯体の構造式(左)と、今回開発されたCPL発光体(右)