Intelは、2017年3月に「Optane SSD DC P4800Xシリーズ」を発表してサーバSSDの新市場開拓を進めることを公表したが、同製品には新たなメモリ技術「3D XPoint」が用いられていることが話題になった。

同シリーズは2017年後半の出荷計画だが、市場調査会社である台湾TrendForceのメモリ市場調査部門DRAMeXchangeのシニア調査マネージャーであるAlen Chen氏によれば、「3D XPointの性能はNANDより優れており、ますます競争が激化していくSSD市場のハイエンド部門におけるIntelの強みを強化するのに役立つだろう」と述べている。また、将来の3D XPoint製品ロードマップとして、クライアントグレードのSSDとストレージクラスのメモリ(SCM)デバイスが含まれる可能性があるとも指摘している。

DRAMeXchangeのデータによると、Intelは、2016年のグローバル・サーバSSD市場でシェア30%以上を占めるトップクラスブランドであり、ライバルのSamsung Electronicsと市場を2分する勢いである。これまでのところ、サーバSSD市場におけるIntelのリーダーシップは、同社のCPU市場における支配力の恩恵によるところが大きいが、Samsungやその他の後発参入企業も、経験を積みつつあり、中堅・低価格のサーバSSD分野を中心に積極的な価格戦略によるシェア拡大を狙っている。そうした背景からChen氏は、「Intelが独自のメモリ技術を採用した新たなプレミアムSSD製品群を投入することは、NAND生産能力で、Samsungや東芝に後れを取っている同社が、サーバビジネスにおける利益率を維持することにつながる」とするほか、「3D XPointの導入が、ハイエンドなサーバSSD市場に過度に依存するリスクを軽減するのに役立つことにつながる」と説明している。

また、DC P4800Xシリーズは128Gビットの3D XPointチップと自社製コントローラチップ、ならびにPCIeインタフェースの組み合わせで構成されており、最初に375GB品の提供を開始し、後に750GB品と1.5TB品の提供が計画されている。その性能は、シーケンシャル読み出しが2.4GB/s、シーケンシャル書き込みが2.2GB/s、IOPS read/writeはともに50万以上、レイテンシは10μs未満(typ)、そしてSSDの寿命を示す指標である「DWPD(Drive write per day)」は1日あたり30回としており、「DC 4800Xシリーズは、高い耐久性を持ちながらPCIe G3×4を最大限に活用するSSDソリューションとしてIntelは提供していくことになるだろう」とChen氏は読み解く。

DRAM、3D XPoint、NANDの寿命比較。DRAMは無制限、3D XPointは代表的なNANDの1000倍程度、NANDは最高で3000回程度 (出所:DRAM eXchange)

さらに、メーカー推奨価格として375GB SSDは約4ドル/GBに設定されているが、類似仕様のPCIeベースNAND SSDは約1ドル/GBが設定されていることから、価格競争よりも性能が求められやすいハイエンド市場をターゲットに設定した可能性があるとChen氏は説明している。ただし、DRAMとメモリプールを構築できる独自の仮想化技術「Intel Memory Drive Technology」と組み合わせることで、包括的な価格は約5ドル/GBとなり、サーバDRAM DIMMの平均販売価格が約7ドル/GBを考えると、競争力がないともいえないとも指摘している。

NAND PCIe SSD、Optane SSD DC P4800Xシリーズ、サーバDRAM DIMMの価格/性能比較。表の上から順に、GB当たりの価格(ドル)、シーケンシャル読み出し、シーケンシャル書き込み、読み出しIOPS、書き込みIOPS、代表的なレイテンシ (出所:Intel提供データに基づきDRAMeXchangeが作成、2017年4月)

なお、「Optane SSDは、性能と価格の両面で、サーバDRAM DIMMとNANDサーバSSDの間に位置付けられる製品である。つまり、サーバDRAMを完全に置き換えるには性能が十分ではないが、サーバDRAMと組み合わせてシステム全体の動作を改善することは可能となる」とChen氏は述べており、価格差を無視すれば、通常のNAND SSDよりも優れていることがうかがえるが、今後、クライアントSSDやSCMデバイス市場での普及を図ろうとすれば、OEMに対して魅力的な価格をどのように提示できるかがポイントになるとしている。