東北大学は、同大学大学院理学研究科地学専攻の吉崎昂氏、中村智樹教授、武藤潤准教授らのグループとカリフォルニア工科大学のChi Ma博士が共同で、隕石試料中に存在する太陽系最古の物質から新種の鉱物を発見したことを発表した。太陽系誕生直後の固体物質の物質進化過程に新たな制約がもたらされることが期待される。

この新鉱物は、隕石の研究で著名なカリフォルニア大学ロサンゼルス校のAlan E. Rubin博士の名にちんで「Rubinite(ルービナイト)」と命名され、イギリスの学術雑誌「Mineralogical Magazine」のNew Mineralsリストに掲載される。

Allende 隕石中のルービナイト(薄灰色)の電子顕微鏡写真 (c)Takashi Yoshizaki (出所:東北大学Webサイト)

太陽系は約46億年前に誕生し、それから数千万年の間に宇宙の塵が集積して小さな天体を形成し、それらが衝突合体を繰り返して原始惑星ができ、現在の姿になったと考えられている。原始太陽近傍の高温の星雲ガスから凝縮した小さな固体物質は「難揮発性包有物」と呼ばれ、太陽系の進化過程で溶融・分化を経験しなかった小惑星から飛来したコンドライトという隕石に含まれている。太陽系誕生直後の情報が記録されていると考えられ、その形成進化過程を理解するうえでの重要な研究対象となっている。近年、分析技術の進歩により試料中の微小領域(10μm以下)の分析が可能になった結果、この難揮発性包有物の初期太陽系に関する新たな物質科学的情報が得られるようになった。

研究グループは、始原的なコンドライト隕石の一種であるAllende隕石の走査型電子顕微鏡観察を行い、Ca、Ti、Si、O 等の元素から成る微小な鉱物を発見した。化学組成や結晶構造の詳細な分析の結果、この鉱物はCa3Ti3+2Si3O12という化学式を持つザクロ石の新種であったという。同じ化学式を持つ物質は既に人工的に合成されていたが、天然鉱物として発見されたのは今回が初めてとのことだ。同様の鉱物は、カリフォルニア工科大のChi Ma博士によって、別のコンドライト隕石(Vigarano隕石)からも同時期に発見された。両者は2016年12月、この鉱物を共同で国際鉱物学連合の新鉱物命名分類委員会に新鉱物として申請を行い、2017年3月に新鉱物と認定された。

太陽系の進化過程の模式図 (c)Takashi Yoshizaki (出所:東北大学Webサイト)

ルービナイトは、地球に比べ遥かに還元的な環境下でしか安定に存在しないTi3+を非常に多く含んでおり、難揮発性包有物が凝縮した原始太陽系星雲内の環境が非常に還元的であったことを強く示唆するという。今後はルービナイトの詳細な鉱物学的、岩石学的、同位体宇宙化学的分析等を行い、熱力学的計算結果等も組み合わせてこの鉱物がどのような条件下で形成したのかについて考察することで、原始太陽系星雲中の物理化学条件に新たな制約が与えられていくことが期待されるとしている。